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民間による資本形成は70年代末に急増しているが、その一時期を異常値とすれば比較的コンスタントな増加傾向をみせている。1977年には国民会議派が総選挙で敗退してジャナタ党が政権の座に就いている。ジャナタ党は、脆弱な政権基盤からポピュリスト的性格の強い政策運営を余儀なくされたばかりか、その中枢にはUP州西部穀倉地帯の富農層の代弁者であるチャラン・シン(Charan Singh)がいた。8彼は、僅かな期間ではあるが副首相兼蔵相にも就いている。この時期に農業優遇、それも商業農民の利益を念頭におく政策が採られることになる。その典型が、農業金融を含む農業補助金の増加である。
9こうした補助金は、いったん制度化されると受益者にとって既得権益化するために、その削減にはラチェット効果が働き、再び政権に返り咲いた会議派も農業補助金の削減はなしえなかった。農業部門での民間資本形成にどれほど政策的関与があったかは不明であるが、農業部門における民間の固定資本形成額に対する農業制度金融貸出額の比率が70年代には29%であったのが80年代に入ると60%へと急増していることから、民間部門の資本形成に対する政府の財政支援の増加が窺えよう(第1-12図)。
10しかし政府財政の赤字基調が本格化するなか、政府は開発支出の削減を余儀なくされ、80年代後半以降の農業部門における民間と公的固定資本形成の乖離が発生した11。中央政府も農業部門の固定資本形成のための公的投資の減少を問題視しながらも、それは「州の管轄事項である」としている。12しかし州政府財政は中央政府のそれにも増して深刻であり、多くの用水路建設事業が計画段階で止まったままになっている。

民間部門による固定資本形成は、管井戸(tube-well)やトラクターといった外部効果の少ない領域に集中している。これに対して、用水路灌漑などの外部効果をもつ農業インフラ建設に向かうべき公的資本形成が減少していることは、インドの農地灌漑率が30%強でしかない現状を考慮するまでもなく、長期的な食料安全保障を脅かす危険をはらんでいる。

 

 

 

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