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良好な水管理をある一定規模の農地で可能とするには、用水路灌漑(canal irrigation)と管井戸(tube well)が有力な方法である。用水路灌漑が機能するには、水配分を管理して水利費を徴収する水利組合(water users association)が不可欠になる。しかしインドに限らず、用水路灌漑の維持・管理には多くの問題が残されている。水利費の徴収率が50%にも達しないというのが、現状である。また用水路の建設には多大な公共投資が必要となるが、後に述べるように、財政赤字に悩むインドでは用水路建設が暗礁に乗り上げている。このために用水路よりも効率的水管理が可能となる管井戸が、特に米の高収量品種導入に不可欠となる。ここしばらく、ガンジス河下流域の西ベンガル州やビハール州といった貧困州でも土地生産性の上昇が見られるが、それは管井戸の導入が進んでいるためである。

ところで、効率的灌漑には農地の交換分合(land consolidation)も不可欠となる。インド農業のひとつの足枷は、男子への均等相続から生じる分散圃場にある。このことは、ある程度の規模の経済性を有する管井戸の導入を阻害することになり、また水路建設・管理の困難さなどから水資源の効率的利用そのものが妨げられる。土地の交換分合の必要性は独立前から指摘されており、ハリヤナ州を含む旧パンジャーブ州では英領インド時代からその試みがなされていた。その動きは独立後に本格化して、パンジャーブ州とハリヤナ州では60年代までに整備事業は完了し、「緑の革命」のための制度的条件が整えられていた。1しかしビハール州や西ベンガル州では、その事業は今持ってほとんど進展していない。またインド北西部の交換分合が、農地の区画化により1筆を1エーカーの正方形に統一したのに対して、ガンジスの下流地域では土地の交換に止まり農地の形状にまでは規制が及んでいない。

 

 

 

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