4. インド人口の将来
インドの人口転換は、中国と比較して、かなりゆっくり進行している。両国とも未だに農業部門の比率が高いから、人口転換の速度を左右しているのは農村の近代化の状況である。独立後のインドでは農地改革が不十分で、植民地時代からの農村構造がそのまま引き継がれている。この点が改善されない限り、インドの人口転換の速度を急激に加速させることは難しいであろう。
国連の将来推計を見ると、人口転換が急展開することを想定した低位推計では、21世紀にはいると人口増加率は加速度的に減少し、2040年頃には総人口13億5千万人前後で増加を停止するとされている。先に述べた中位推計の16億人と比較すると、2億5千万人(16%)少ない。これに対して社会・経済の近代化の遅れから人口転換が遅滞する場合、来世紀中葉のインド人口は20億人に達する可能性さえある(高位推計)。
将来人口は決して確定したものではなく、社会や経済の近代化、教育や家族計画に対する政府の取り組み等に応じて変化する。しかしいずれにしても急増する人口を支える基盤の確保が、今後のインドにとって重要課題となることは間違いない。とくに水資源を確保し食糧増産を進めることが重要である。もし死亡率の持続的な低下を維持することに成功しなければ、将来人口の推計は根拠を失い、まったく別の局面を迎えることになる。