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出生率に対する相関係数が3番目に高いのは乳児死亡率であり、4番目は保護夫婦率である。夫婦保護率とは、中央および地方政府のおこなう家族計画によって、希望しない妊娠の危険から有効に保護されている再生産年齢にある夫婦の割合をいう。

社会的・経済的諸要因は相互に複雑に関係しあっているので、単純な相関係数だけから結論を導くことは危険である。そこでこれらに統計的処理を加えて回帰方程式に置き換え、各変数がどれだけ出生率の地域格差に寄与しているかを示す標準偏回帰係数を計算してみると、圧倒的な影響力を持つ変数は雇用労働者率、はるかに弱いが有意な影響を持つ変数は女性識字率と保護夫婦率という結果となる。

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以上を要約すると、インドの出生率低下を先導する地域では、賃金労働者率すなわち農村における農業労働者の割合および非農林業就業者の比率が高いということである。逆に言えば伝統的な土地持ち自営農民が多い州では、出生率の低下が遅れている。地域格差から見る限り、雇用関係の近代化が出生率低下の基本的原動力になっていることが窺われる。教育投資による女性の識字率向上、あるいは政府主導の家族計画が出生率低下にそれなりの効果を収めていることも明らかではあるが、その成功の前提として、雇用関係の近代化を通じて小家族の利益が大衆のなかで実感されることが必要であることがうかがわれる。

 

 

 

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