1949年から90年代半ばまで、中国では多くの水利工事を行ない、水利建設の大きな成果を上げている。主には、堤防、海岸堤防を20万キロメートル近く建造し、各種ダムを8.6万個造っているが、その中で有名なのが長江葛洲ダム水力発電所、黄河龍羊峡水力発電所で、ダムの総容量は4600億立方メートルに達しているが、その内80%前後は農業灌漑に使用されている。また、北方の干ばつ地域では300万個所余りの動力電気による井戸を掘っている。これらの水利施設は毎年農業に4500万立方メートルの水を提供して、4900万ヘクタールの耕地が有効灌漑耕地となっている。そのうち干ばつと水害に絶えられ、豊作が保証される耕地面積は3200万ヘクタールに達している。中国では、かつて頻繁に氾濫していた黄河を基本的に制圧し、1949年以来一度も堤防切れが発生しておらず、黄河流域の農業生産及び人民生活を確保している。
水資源の需給矛盾を解決するため、中国政府は過去の経験を総括したうえで、以下の点を強化することを目指している。
(1) 水資源の実態をさらに把握し、水利区画と計画のもとで、地方によって適当な方策を取り、段階的に、重点的に水資源の合理的な開発利用を図る。
(2) 水利工事施設を増加させる。幾つの大きな蓄水工事を行う。例えば、有名な長江三峡プロジェクト、黄河小浪底プロジェクトによって水資源の時間分配不均衡矛盾を解決する。また、流域に跨る水の移動を行う。例えば、長江の水を北の黄河に運ぶ「南水北調」プロジェクトにより水資源の地域間分布の不均衡問題の解決を図る。同時に、既存の水利施設の役割をも強化する。
(3) 節水を重視する。先進技術を導入させ、科学的な用水と計画的な用水を実施し、水資源の利用率を向上させる。過去には、しばしば灌漑面積の拡大のみを重んじ、水の利用率の向上にはあまり目が向けられなかった。そのため、農地灌漑時に、水溢れ、水漏れなどによる水の浪費が相当多かった。現在、積極的に節水農業を実施しているが、その中心は灌漑技術の改革によりスプリンクラー灌漑、点滴灌漑技術の普及である。このような灌漑技術の改善で伝統的灌漑方式より二分の一または三分の二の節水が可能になる。
(4) 水源地域と水土流失の激しい地域で、草植え、植樹、水源の維持を大いに行ない、水土を保持させ、新たな生態バランスを図る。
(5) 関連法律または法規を完成させ、管理を強化させる。それとともに、水資源の汚染と浪費の防止に努める。