建国後の半世紀近く、中国の出生率は一時的には変動したものの、趨勢的には低下してきた。特に、1970年代以降の低下は著しいものである。平均合計特殊出生率をみると、1950年代は5.87、1960年代は5.68とほぼ同じ水準にあった。1970年以降は着実に低下を続け、70年代の年平均合計特殊出生率は4.01であり、1980年代は年平均2.50を下回るようになっていた。1990年の第四次人口センサスによると、中国の合計特殊出生率は2.25であるが、もっとも低い北京では1.33であり、最も高いチベットでは全国平均水準の倍近い4.22に達していた。全国で三分の一の地域が人口の置換え水準を下回り、かなりの低出生力水準に達していたのである。
出生率の低下とともに、死亡率も引き続き低下して、人口の平均余命も上昇してきた。1957年、中国人口の平均余命は、男子が55.8歳で女子が55.9歳であったが、1981年には男子が66.3歳、女子が69.3に上昇し、1990年にはさらに男子が67.6歳、女子が70.9歳に上昇した。
出生率の持続的で急速な低下と平均余命の引き続く上昇は、将来中国人口の急速な高齢化を意味するものである。中国では地域間の年齢構造にさまざまな格差が見られる。都市・農村間の人口移動もその一因であろうが、主な理由は出生力水準の差異にあるものと思われる。中国の高齢化水準は全体的にはまだ低いものであるが、都市と農村の間、地域間の格差が大きい。今後中国の人口高齢化が非常に速いスピードで進むことが予想されるが、その理由は二十数年来人口抑帝出を行なった結果、出生力が持続的に低下したためである。
人口抑制政策による出生力の低下は人口の年齢構造の変動をもたらしている。表1に示されているように、中国の年齢構造係数を見ると、65歳以上の高齢人口は1990年には5.6%であったのが、1995年には6.7%に達し、老年人口指数も1995年には10%台に昇っている。国連の中位推計(World Population Prospects:The 1996 Revision)によると、中国の65歳以上の高齢人口の割合は2020年には10.8%となり、2030年には14.4%、さらに2050年には19.2%となる見通しである。中国の高齢化水準は他の先進国に比べればまだ低いものであるが、地域間の格差が大きい。例えば、1995年の場合、65歳以上の高齢人口が全国平均では6.7%であるのに対し、高齢化が最も進んでいる上海では11.4%に達している。