演者のいる施設、NJCでの1973〜83年の多剤耐性例(INH、RFP以外に、5〜7例に耐性の例が多い)の治療成績では、治療した171例中評価できた136例で、初期の菌陰性化は65%、失敗が35%、長期の陰性化は56%、失敗は44%であった。3剤以上のある程度有効な薬剤が使えた例では、初期の成功率70%、失敗率30%、長期の成功率49%、失敗率51%で、失敗例の45%は結核で死亡した。治療にはキフロン剤を使用し、外科療法も適応例では行っている。
1983〜93年には、空洞の除去を目標に外科療法を積極的に行った。化学療法は術前4カ月、術後は24カ月行う。適応は、外科療法をしなかった場合に生命に危険がある程度の耐性があり、空洞が限局性で、術前に菌量が減少し、生活できる程度の心肺機能が残ると予想される症例である。薬の選択は、未使用剤について薬力学的な評価を行って使用する薬剤を決め、全身状態の改善に努め、経口、非経口的に栄養を補給する。術後の蛋白の喪失量が多いためである。治療例109例中治癒85%、排菌持続9%、死亡5%で、1973〜83年の成績に比べて著明な改善がみられた。医療費も、外科療法の活用で大幅に減らすことができた。48歳の韓国人の多剤耐性例を例示。INH、RFP、PZA、SM、EBに耐性、Ciprofuloxacin、PAS、CS、AMK、EBの併用で菌量が減少し、右肺の空洞消失、左肺全滴を実施。菌陰性化し治癒、医療費は30万ドル、慈善団体が支援した。
米国では1カ月の入院費のみで1000ドルかかる。手術の手技としては、胸郭変型の機能に対する影響が大きいので、胸郭成形術はほとんど用いていないとのことであった。
4. 結核菌検査:精度管理 S. J. Kim(韓国結核研究院院長)
結核対策の中で菌検査の役割は、患者の診断、治療成績の確認、疫学的なサーベイランス、特に薬剤耐性の頻度の追跡、多剤耐性結核の治療方針に対する助言である。
従来精度管理(Quality Control)と呼ばれた領域が、最近は概念を広げて精度保証(Quality Assurance)と呼ばれている。これには、従来のQCに加えて、業務の熟練度評価(Proficiency Testing)、業務改善(Quality Improvement)が含まれる。
塗抹検査では、毎日5検体以上、1年に800〜1000枚程度の検体を見ることが熟練するために要求される。染色液を点検することも忘れてはならない。Plausibility Analysisで、菌陽性率の推移を観察し、異常な高低の有無を見ることも大切である。同じ検査室で、同じ検体を違った技師が点検することも忘れてはならない。
培養検査では、塗抹陽性培養陰性の率、汚染率を経時的に点検する。時には結果の分かっている検体を日常検査の間に混ぜることも試みて良い。耐性検査では、感性、耐性の成績の分かっている検体を保存し、それで結果を点検する。
熟練度評価では、施設、設備、人員、試薬の貯蔵状況、記録の仕方や報告の点検、検査の実施状況については、現場の顕微鏡を用いて、スライドを無作為に抽出し、点検する。
5. 結核菌検査:最近の進歩 阿部千代治博士(結核予防会結核研究所)