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平成十二年四月に実施が予定されている介護保険制度では、大幅な民間活力と競争原理の導入が盛り込まれている。これまでの行政処分による措置制度においては、サービス利用の決定は市町村が行っていた。介護保険制度下では、利用者がサービス提供者を独自の判断に基づいて選ぶこととなる。福祉部門に限らず行政サービス全般に競争原理を導入する動きがイギリス、オーストラリア、ニュージーランドなどアングロ・サクソン系諸国をはじめとして、世界的な潮流となっている。ここでは、この公的部門の改革の思想的背景となっているニュー・パブリック・マネジメント(新公的部門経営管理=NPM)の考え方を整理し、我が国での介護保険制度において適用可能と考えられるNPMの一手法、すなわちPFI(民間資金を用いた公共施設等の整備・運営)について検討を試みることとする。

 

一九九七年の橋本行革時に取り上げられ、今回の中央省庁改革の目玉の一つとなった独立行政法人(エージェンシー化)や、現在法案が国会で審議されているPFIはニュー・パブリック・マネジメント(以下ではNPMとする)と呼ばれる考え方に基づいている。NPMとは、端的に言えば、公的部門の管理に民間部門の経営手法を最大限に活用し、公的部門の効率化と公共サービスの質を高めようとするものである。「do more with less」(より少ない費用でより多くの成果を出す)あるいは「Value for Money」(国民の税に対する支払い価値、費用対効果)を追求するための概念ともいえよう。

イギリスの学者、C・フッドによれば、NPMは、新制度経済学(公共選択理論やプリンシパル・エイジェント理論など)と民間の企業経営理論が融合されたものとしている。新制度経済学においては、あらゆる経済主体を利己的であると想定する。一方の当事者がある特定の業務の遂行をもう一方の当事者に依頼する場合、契約関係が発生するが、双方とも利己心が支配的であるため、依頼人(プリンシパル)からの要求事項を依頼された者(代理人、エージェ

 

 

 

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