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高齢化社会を迎え、病院や施設でリハビリテーションを行う理学療法士は、活躍する場所には不自由しない人気職だという。その職をあえて辞し、一昨年三月、自宅でデイケアハウスを開いた阪井由佳子さん。二九歳という若さ、そしてバツイチ、子持ちという数々のハンデももろともせず、『お金も自分の時間も何もないけど、でも、楽しいよぉ」と笑顔で語る彼女は、とびっきり明るく元気なヒマワリのような人だった。

取材・文/城石眞紀子

 

まだ田んぼが残る富山市綾田町の『にぎやか』に到着したのは、お昼を少し回った頃。階下の広い居間では、昼食を終えた男女九人ほどがくつろいでおり、年齢層は子供からお年寄りまでさまざま。痴呆症や脳卒中の後遺症の人もいれば、脳性まひの障害者もいる。そして、テレビを見る人、ゲームを楽しむ人、昼寝をする人、おしゃべりをする人と、本当に勝手気まま、それぞれがマイペース。

この日のスタッフは、阪井さんも含めて男女四人だというが、「誰が利用者で、誰がスタッフなのかわかりませんね」と阪井さんに問いかけると、「ここでは利用者とスタッフは介護する人とされる人という関係ではなく、対等だからかね。みんな、言いたい放題言ってるもの」といって、アハハと笑う。

利用者が自宅で暮らしているのと同じような普通の生活がここにはあった。

 

 

 

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