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人たちのいろいろな意見やサービス内容などに関する個別的で具体的な問題点を丹念に拾い上げてほしい。オンブズマン(市民による行政監察)も含めてです。そうした情報をきちんと受け止めるのが行政の仕事だと思います。

介護保険制度は全般的に、特に在宅サービスについては相当な規制緩和が行われます。だから正直言って、サービスの質はかなり気にかけておかないといけない。サービスの資質の問題が介護保険の最大のテーマになるかもしれません。そして、サービスの質の問題は施設サービスについてもまったく同様のことがいえます。

 

Q 制度の全体像が見えてきて、市町村の具体的な事業計画もでき上がってくる今年の年末は大きなヤマ場になりそうですね。

山崎 そうです。介護保険はいよいよ本番に入ってきますが、実は最近、心配なことがあるんです。よく「論語読みの論語知らず」といいますね。厚生省の人間もそうだけれども、市町村の職員は介護保険は知っているけれど実際の「介護」を知らないんじゃないかと時々感じることがあります。介護保険制度を勉強すると「介護」をわかった気になっちゃう。これが問題です。介護保険はもともと介護の問題を解決するために作る制度で、しかも、その制度は万全ではないということを頭のどこかに入れておいてほしい。問題の本質を知るために介護の現場に行って勉強することもぜひ怠らないでもらいたい。「介護保険法読みの介護知らず」にならないよう心得てほしいんです。

そういう意味で、今市町村が作り直している老人保健福祉計画に注目しています。これは、それぞれの市町村が介護保険以外のサービスも含めて、これからどのように地域全体の高齢者福祉を考えていくのかについて計画を立て、理念を明確にするものです。この計画も二〇〇〇年四月から実施します。介護保険事業計画の方は、市町村が持っている財政力などで決まってしまう部分がありますが、老人保健福祉計画は市町村の創意工夫が反映されると思いますよ。そして、そのポイントは「要介護にならないための介護予防」と介護保険ではカバーされない高齢者の「生活支援」の二つだと思っています。

 

 

 

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