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今は「不安な老後」から「豊かな老後」への転換期です

 

Q 堺屋太一経済企画庁長官によれば「日本列島総不況」。このままでは国家財政も地方財政も窮迫して、財源の半分を公費でまかなう介護保険の行方はおぼつかない。本当に介護保険制度は予定通り二〇〇〇年四月からスタートできるのかと危惧する人もいるようですが。

山崎 いちばん問題なのは国民全体が将来に対する不安を持っているということです。日本の個人貯蓄の総額は一二〇〇兆円。そのうちの半分は六五歳以上の人たちが貯蓄している分だそうです。自分の老後の生活に何が起きるかわからない。介護を受けるようになったら、寝たきりになったらどうしようという不安があるから貯蓄に走ってその分消費に回らない。そういう悪循環が今の不況をつくり出している。介護保険は、そうした国民の先行き不安を解消するための手段の一つでもあるのです。介護が必要になったときに必要なサービスを受けられるようになれば、高齢者はお金を必要以上に貯蓄せず老後の生活を楽しむために使うはずです。そうなれば経済にも良い影響が出てくるでしょう。だから、私は二〇〇〇年四月からはじまる介護保険制度は、老後の生活を心配する人生設計から、豊かな老後を送る人生設計に切り替える絶好のタイミングだと考えているんです。

 

Q 制度導入時の保険料は一人一ケ月二五〇〇円前後と厚生省は言っていますが、それをかなり上回る保険料を試算している市町村もあります。

山崎 二五〇〇円というのはあくまで平成七年時点で試算した平均保険料です。実際の保険料は住んでいる市町村によっても、所得によっても違ってきます。確かに、療養型病床群など施設が多い市町村では、六五歳以上の一人当たりの平均保険料をかなり高く試算しているところもあります。なぜそんなに高くなるのか、国の調整交付金制度で保険料の格差をどれだけ抑えることができるのかなどについて、十分分析していかなければなりません。

 

 

 

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