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介護保険制度のめざすところは、高齢者介護・自立に対する社会的支援、介護サービスの高齢者自身による選択、在宅介護の重視など幅広い。とりわけサービス利用における措置から契約ベースヘの移行、多様な供給主体の参加促進によるサービスの選択肢の拡大と効率的な提供の推進など、市場原理に基づいたサービス提供システムに変わることが大きな特色である。

しかしながら、高齢者が心身機能の衰弱や痴呆などで意思能力や判断能力に問題が生じて、サービス提供が受けられなくなったり、あるいはトラブルや取引被害にあって生活困難に陥ったりすることも考えられ、自由競争下での多様な事業主体の中から自己責任でサービスを選択し、決定し、契約することは、特に寝たきりや痴呆の人には高いハードルである。このため介護保険制度導入をにらみ、利用者保護やサービス供給主体の要件整備の観点からさまざまな法整備が進められている。

まず、利用者保護の観点では、「成年後見制度」の改正がある。本年四月、法務省は成年後見制度の改正に関する要綱試案を公表、各界での論議を得て、来年には法案提出する方針だ。痴呆症などにかかった高齢者について財産をめぐるトラブルを防ぐ、介護サービスの選択や契約をする、あるいは受けたサービスに対するクレームを行うなどの場合、現行制度では民法に規定された禁治産宣告(後見人)、準禁治産宣告(保佐人)を受けなければならない。しかし、1]心身喪失の常況あるいは心身耗弱の判定がむずかしい(統一した基準がない)、2]戸籍に記載される(差別のもとになる)、3]後見人が強い権限を持ち、乱用の心配がある(親族間の財産争いが起こるもとになる)、4]手続きに多額の費用や時間がかかる(結論が遅い)、5]欠格事由になる(選挙権

 

 

 

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