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表紙絵から

 

 

池田げんえい/1946年神奈川県生まれ。日本児童出版家連盟、現代児童会会員。創作『鬼の会』同人。日本デザイナー学院講師。はり絵作家。

 

● 平成・東海道五拾三次

その44「四日市」

 

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工場群に煙がたなびく。

 

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滝川で遊ぶ子ら。

 

-工場群遠望-

ルート23(国道23号)をひたすら西へ、土地の人は「名4」と呼んでいる。遠くかすかに見える工場群の煙突がわずかずつ近づいてくる。桑名から歩いて1時間半ほど、やっとこの工場地帯に踏み入れた。風が強く吹き飛ばされそうになりながらガードレールにしがみつき、体を斜めに前進。そういえば四日市の図も笠を飛ばされている。昔からこの辺は風が強いのだろうか?

下の土手では、そう風も強くないと見え家族連れがのんびりと何かを摘んでいる。造船の大きな工場と船員相手のホテルがあちこち建ち並ぶ間をボクは唯々歩いた。「1泊2500円食事付き」「新鮮なサカナ」の看板の間を焦って歩いた。このメカニカルなグレー一色から早く逃れたくて、街なかをめざして唯々歩いた。この後、大雨と足の腫れで3日も足止めを食うとは…トホホ。

 

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安藤広重絵「四日市」

 

毎月4の付く日に市が開かれたというので「四日市」。突然の風だろうか旅人が転がる笠をこっけいな様子で追いかけている。左後方には前かがみに歩く男。柳も草も大きくなびいている。画面に吹く木枯らしの音が、画の中から聞こえてきそうである。

 

 

 

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