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真夏の太陽が照りつける京都は、うだるような暑さ。取材に訪れた日も、午前十一時にはすでに気温は三五度を超えており、じっとしていても汗がダラダラと流れ落ちてくる。そんな中を、ポロシャツにジーンズという軽快な出で立ちで、駅まで出迎えてくれた横田さん。

「暑い中を、ご苦労さんどすなあ。私も現場に出るようになって、外でお金を得るということがどんなにしんどいことか、つくづく感じてるんですわ。世の中の奥さんも、いっぺん、外で働いてみると、どんなにご主人がえらいかわかる。きっと、帰ってきたら冷たいおビールくらい出してあげないかん、という気になりますわ」といって、明るく笑う。

京都弁の柔らかな口調とふくよかなその姿のせいか、横田さんは、女大工というよりも、頼りになる"日本のおかあちゃん"という雰囲気の人だった。

 

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最初は名前を貸すだけのつもりだったが…

京都生まれの京都育ちという、生粋の京女である横田さんが、『横田工務店』を経営する宮大工の棟梁・亀(ひさし)さんと結婚したのは、二〇歳の時のこと。十三歳と、ひと回り以上も違うこの年の差結婚に、横田さんの実家からは大反対を受けたというが、その後、一男二女をもうけ、普通の主婦として、ごくごく平凡に過ごしてきた。

 

 

 

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