ただしこれは、全ての自治体で一律に減少するというわけではない。厚生省の試算表によれば、平成七年度現在で老人福祉を手厚く実施しているところほど介護保険導入による負担軽減幅は大きくなる。逆に福祉サービスの乏しいところは、福祉サービスでの負担率が減少してもサービス量自体が大幅に増えるため、負担減少額は小さくなってしまうのである。
ちなみに最上町とほぼ同じ規模で、平成七年度には在宅サービスがほとんどなかった関西のある町で試算したところ、減少額は一二〇〇万円と最上町の四分の一程度に過ぎなかった。介護保険導入で、福祉に消極的な自治体の負担も減少するものの、その多寡は高齢者福祉の現状により大きく左右されることがわかる。
■ 地域に還元される新たな資金源
介護保険のメリットは、単に市町村の負担軽減に留まらない。実は地域経済をマクロの視点で見たとき、もっと積極的な意味をいくつか持つ。そのひとつが地域へ流入するお金の問題である。再び最上町の例で具体的に見てみよう。
次頁の表2は、自治体が運営する介護保険の財源を示したものである。介護保険は大きく分けて、地域住民が支払う保険料と、国・県・市町村の負担(税金)により支えられている。その配分は、六五歳以上が支払う保険料が一七%(a)、四〇歳以上六五歳未満の保険料が三三%(b)、市町村と県の負担分が各一二・五%(c)(d)、国が二五%(e)となっている。そして介護保険の総財源額は、六五歳以上の高齢者人口と保険料額で決まるしくみになっている。つまり六五歳以上の方が二八七二人暮らす最上町では、月額二五〇〇円の保険料を集めるとすると、介護保険の年間予算は、
2500円×12ケ月×2872人÷0.17
(人口は九七年実績と変わらないものと仮定する)で五億六八二万円となる。