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■ 最上町にみる介護保険と財政構造

奥羽山脈に囲まれた県内有数の豪雪地帯最上町の人口は約一万二〇〇〇人。長年にわたって急速に進む過疎化と高齢化に悩まされてきた。この二つの問題の解決策として、最上町は一九九〇年代に入って高齢者福祉政策を積極的に行ってきた。

町の財政規模は約六〇億円。その財政規模にほぼ匹敵する五二億円を投じて、最上町は総合福祉施設を建設した。「ウェルネス プラザ もがみ」と命名されたその施設は、医療・福祉・保健を一体化させたもので、総敷地面積は東京ドームに匹敵する。この施設建設と福祉サービス開始により、最上町は介護保険のための基盤整備をほぼ完了した。

では二〇〇〇年に介護保険制度がはじまった時、最上町の財政負担は保険がない場合と比べてどれだけ違うのだろうか。厚生省作成の試算表「自治体における負担の変化算定のためのワークシート」に基づいて算出してみよう。

高齢者福祉は医療と福祉によって担われているのが現状である。医療というのは社会的入院など本来福祉でみるべきお年寄りが入院している場合などを指す。福祉というのは文字通り高齢者福祉政策である。よって介護保険の有無による財政負担の比較は、老人保健医療と福祉政策における町財政負担の合計金額を比較することで可能となる(次頁表1参照)。

二〇〇〇年に介護保険が行われないとすると、最上町の老人保健医療と福祉での財政負担は高齢化に合わせて膨張し、それぞれ約一億八○〇万円(1])と約一億一五〇〇万円(2])に膨れあがる。一方、介護保険が実施された場合は、老人保健医療負担は1]より二〇〇万円減って約一億六〇〇万円(3])、老人福祉費は四〇〇〇万円以上も圧縮されて約七二二〇万円(4])に留まる。よって介護保険の有無による差額は(1]+2])-(3]+4])となり、合計四五七〇万円を最上町は介護保険で節約できる計算となる。

ではなぜ、介護保険は町の財政負担を軽減できるのか。老人保健医療での差1]‐3]と、福祉での差2]‐4]について見てみよう。まず老人保健医療では、社会的入院など本来福祉でみるべきものが介護保険の対象となり医療としては行われなくなるから約二○○万円の減少が見込まれる。また老人福祉では、介護保険の導入でサービス量全体は増加するものの、町の負担については従来が福祉予算の約四分の一だったのに対し、新制度では八分の一までに軽減されるために、四〇〇〇万円以上の負担減となる。

 

 

 

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