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「心」も含めてバランスのとれた福祉を

堀田 本当にお忙しい中をありがとうございます。奥さまには「そういうところへは出ません」とおっしゃっておられたのを、口説き落とさせていただいて。

橋本大 堀田さんともお目にかかれるということで、私がすぐ「ハイ」と返事をしたら、家内からはあとで「そんなところへ出ても何もしゃべれないわ」と怒られました。今日は「その分はぼくがカバーするから」といって出てきましたので、そのように聞いていただければと思います。

堀田 本当にお熱い感じです(笑)。ところでまず公的介護保険ですが、二〇〇〇年四月の施行に向けて、準備がとても大変だと思います。でも、それだけではうまく行かないんじゃないか。やはりいろんなボランティア、家族の方々との連携が必要じゃないかというのが私の持論なんです。その点、いかがお考えですか?

橋本大 同感です。介護保険でできることは、要介護認定を受けた方の身体のお世話です。メンタルな心のお世話もする仕組みがないと、全体としてバランスのとれた福祉にはなりません。

堀田 たとえ高齢で一人暮らしをしていても、寂しくないように、そこは家族や地域の人たちがぜひ支えていってほしい。

橋本大 県内で僻地医療をしていたお医者さんからお聞きしたんですが、あるおばあちゃんの大病を一生懸命治療してあげて無事退院できて、「先生のおかげで命拾いしました」と大喜びだった。ところが三年後にまたやって来たらずいぶんやつれている。聞くと「あのあと連れ合いが亡くなって、それ以来味気なくて、いっそのことあのとき先生にかからずに死んどればよかった」と。

 

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堀田 力(ほった つとむ)

1934年京都府生まれ。

さわやか福祉財団理事長、弁護士。

 

 

 

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