という問題はあったんですが、新潟じゃあ、子供たちもめったにお墓参りには来てくれないと、説得されましてね」
家や財産は長男によって受け継がれ、代々守っていくものとされていた戦前までの環境下では、お墓もまた長男が承継し、代々墓に入るのは長男夫婦だけ。次男以降は分家として枝分かれし、新たに墓を建てて、やはり自分の長男に継がせていくのが習わし。だが、人口が都市に集中して核家族化が進んだ現代では、Aさんのように、本来承継すべき立場の者が、別の場所にお墓を建ててしまうケースも増えてきた。
また、地理的な問題だけでなく、心情的な問題で、代々墓に入らない、入りたくないという人も増えている。互助会大手の(株)くらしの友が首都圏のサラリーマン、OLを対象に実施した「お墓に関する意識調査」によれば、自分の死後、どこのお墓に入りたいかを聞いたところ、男性は「実家の墓」が四〇・三%で第一位だが、女性は「自分たちで購入した墓」が四〇・○%で第一位。さらに「(結婚しても)実家の墓に入る」が一三・九%もおり、「婚家のお墓に入る」というこれまでの習わしに抵抗を感じている人は多い(前ページグラフ)。
「姑とは、死んでからまでお墓の中でいっしょにいたくない」というのもよく聞く話だが、この調査結果は、これまでの抑圧された生活への反撃、あるいは、夫が家庭内のふれあいを怠ってきたつけを、如実に表しているようで興味深い。心のふれあいのない家庭生活を、死後まで引きずりたくはない、ということか。
さて、それでは、承継者がいなくなったお墓はどうなってしまうのだろうか。
民法では、土地や家屋、現金のようなものが相続人もなく遺された場合は国のものになることが決まっているが、お墓などの祭祀財産は、お墓を使用していた人が生前に遺言などで「祭祀の承継者」として指名した人が承継すると定められており、その際、承継する人は必ずしも遺産の相続人や親族である必要はなく、友人などでもかまわないことになっている。とはいえ、指名された者が、毎年墓地の管理料を支払って供養してくれるとは限らない。
そこである一定期間、管理料が支払われなかったときには、
(1) 永代使用権を取り消されてしまう(都立霊園では五年)。