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パネルディスカッション

 

新しい保育サービスと保健活動

 

司会者 高野陽(東洋英和女学院大学教授)

パネラー

木屋和見(日本保育園保健協議会常任理事)

露木省子(神奈川県・酒田保育園長)

江越貴美子(中野区立沼袋保育園看護婦)

 

提案要旨

 

健康度を重視した保育計画を

 

木屋和見(日本保育園保健協議会常任理事)

 

健康には理想的な健康状態から病気に至るまでの広い連続的な移行帯があり、それぞれの人の健康は、そのどの部分にあるかによって健康度として規定されると考えてよい。健康度は個人によっても異なり、かつ常に変化しているが、子どもではとくに年齢が低いほど変わりやすい。

保育所は健康児を預かる施設とはいえ、実際には毎日元気そうに登園していても、健康にかげりを持つものも少なくない。

日常保育の中で、健康度の低い、いわば、グレイゾーンにある子どもが如何に多いかは例えば「薬持参」で登園するものが毎日数多くあるという現実が物語っている。更に、健康が破綻した病気欠席の頻度を見ても、低年齢児ほど多く、また、新入園後6か月間の欠席回数が、入園後1年以上たったものに比べて明らかに多いことなどは、子どもにとって集団生活への適応のために、年齢が低ければ低いほど健康面に大きな負担がかかっていることを示すものである。

これらの事実を考慮すれば、保育の目標を達成するための指導計画は、一律ではなく、一人ひとりの健康度に応じて個別的に立てられなければならないことが理解できる。

また、日常保育の中で子ども達の健康度を十分に把握することは、健全な生長と発達を支える保育の原点に立った実践であり、事故や発病を未然に防ぎ、諸病の早期発見や救急時の適切な対応にも大きな力を発揮することになる。

個々の子どもについての健康度の正確な判断は、発育歴や定期健康診断結果を基本として、毎日の家庭からの生活情報や地域の保健医療情報などを参考にしつつ、きめ細かな健康観察を行うことによって可能となる。この場合、それぞれの情報は一方通行ではなく、常に情報の交換即ちフィードバック効果が大きいことも忘れてはならない。とくに嘱託医はもとより、地域かかりつけ医との円滑な連携は欠くことの出来ない部分である。

低年齢化の進む日常保育の中で、園児一人ひとりの健康度の把握を重視した保育活動の重要性を指摘したい。

 

 

 

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