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司会(吉澤)本日はお忙しいところ、皆様方にお集まりいただきまして、本当にありがとうございます。

これから「青年の家の現状と課題」第27集の刊行のための座談会を始めさせていただきます。

全国青年の家協議会では、全国の青年の家の活動の改善に供するため、毎年「青年の家の現状と課題」を刊行しています。昨年度は「青少年の生きる力を育む青年の家の在り方を求めて」ということで、主に「青年の家と職員のあり方」を中心に刊行いたしました。今年は、それを受けまして、「青年の家の事業」の観点から刊行をしたいと思っております。その中の第2章の座談会の部分で本日の議論をいただいたものを掲載させていただく予定としております。

本日の座談会では、日頃感じていることなどをご自由にご発言いただければと存じますが、議論の進行上、まず導入として、青少年の現状についてお話をいただき、続いて、青少年の教育の場である家庭、学校、地域のそれぞれの教育の実状はどうなっているのかということについて、話を進めていただいて、最後に、青年の家を中心にして、家庭との、地域との、学校とのそれぞれの連携、協力のあり方をご議論いただければと思っております。

 

中教審答申での『生きる力』

 

司会 平成8年7月の中央教育審議会の答申でも、それから平成10年の中央教育審議会の答申でも、青少年に「生きる力」を身につける心の教育の必要性が強く打ち出されています。「生きる力」というのは、もう皆さん方ご専門ですので、よくご存じと思いますけれども、まず自分で課題を見つけ、みずから学び、みずから考えるということ、これは主に、知、徳、体と分ければ知の部分と思います。次に、正義感や倫理観などの豊かな人間性、これは徳になるものです。それから、健康や体力を言っております。これは体ということだと思います。

その中でも「生きる力」の特に中核となるのは、豊かな人間性であると言っております。これは、美しいものや自然に感動する心などのやわらかな感性、正義感や公正さを重んじる心、生命を大切にし人権を尊重する心などの基本的な倫理観、それから他人を思いやる心や社会貢献の精神、それに自立心、自己抑制力、責任感、それから他者との共生や異質なものへの寛容などの感性や心であると言っております。

そして、子どもたちにこうした豊かな人間性を育むには、まず大人や社会全体のモラルの低下を問い直す必要性を強く訴えております。さらに、子どもたちの「生きる力」を育てるために、家庭や地域や学校、さらには企業とかマスメディアや行政それぞれが、そして社会全体が力を合わせなければ、これらの解決にはならないと呼びかけております。

私たち青年の家を初めとする青少年教育の関係者は、今、この投げかけに答え、子どもたちの心の教育のために真剣に努力をしなければならない立場にもあると思っております。

以上が本日の座談会の背景の概略であります。

まず、そこで話の導入としまして、現在の子どもの心や心身の状況はどうなっているのか、そしてその背景とか原因は何か、ということについて、まずお話を伺ってから進めたいと思います。

 

 

 

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