○前田
観光がその地にもたらす恩恵の強さが、周囲にとってゆがみをもたらす面がある、ということですね。周りに波及させるための何らかの方策は考えておられますか。
○参加者(続)
やはり長浜が頼りになってしまうのです。例えば行政でも、長浜市には商工観光課、地域振興課、産業課といったものがありますが、私たちの町にはそういう機関がありません。国の機関もそうです。例えば今日、中国が「わが国に来て下さい」という宣伝をしていますが、日本は諸外国にそういうアピールをする機関がないわけです。観光庁がなく、運輸省が担当しています。さらに、私たちの旅館になると管轄が厚生省になります。
世界の観光客の入り組みを見ていても、日本は世界でも40番目ぐらいです。出ていく人は多くても日本へ来る人は少ない。ウエルカムプラン21というものがありますが、あれも運輸省の一人相撲という感じがしないでもありません。
○前田
旅の情報が氾濫し、メディアで得た観光の情報をもとに自分でプランニングすることが当たり前になって、「観光資源を前に地元の人の話を聞く」という観光のあり方はほとんどありません。つまりここにガイドさんがいるから話を聞いてくださいというシステムは実践されていないと思います。ですから、そういう仕組みの観光がありますというPRが必要ですね。
私は、なぜこれだけ資源があるのに、観光のやり方は一通りなのだろうなと思っていたのですが、やはりそういう構造的な問題、仕組みの問題があるのかもしれません。
○参加者
私は今日はこの琵琶湖を元気に育てたい方のシンポジウムということで参加させていただいたのですが。
○前田
私は守り育てることと観光というものを1つにしたいと思います。これまでは守り育てるためには観光は要らないという印象が強かったと思います。けれど、観光とは単に「物」だけではなくて、米田さんがおっしゃるような「語り」の要素が必要です。
観光とは、一つの時間と場所を共有する中で、それを守り育てる気持ちの中で生まれてくると思います。実際には環境保全に関する技術的な問題はあり、それは専門的にやらないといけない部分ですけれども、私は観光を通じて守り育てることができると思います。そういう場所として観光資源を位置付けることが大切です。そこに人が来て、その人を迎える人がいて、一緒にこれを見てくれとか、すばらしいだろうという語らいの中に守り育てる気持ちができてくると思うのです。
○参加者
現在は黒壁周辺を中心に観光客が増加していますが、それを将来的にも持続させていくにはどういうような形で展開させていくべきか、それはこれから研究していかなければと思います。黒壁周辺に様々な店のパターンが出来たことによって、そこで過ごす時間を大きくとってしまうわけです。ですから、黒壁の繁栄を維持しつつ、少しでも広域的に広げるためには日帰りではなくて滞在型のほうに引っ張っていかなければと考えています。