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○高崎

観光産業というのは、21世紀の基幹産業になると言われていますが、そういう中で観光地間の競争が非常に激しくなってきています。お客様にとっては、非常に旅が身近になりました。そうなると、観光地を見る目というのはどんどん厳しくなってきます。

そういった中でこれからどのように観光地を考えていくのか。これからは、中・長期的なビジョンで1つのものをつくるということが、大事なのではないかと思うのです。その町で本当に暮らしている人、生活の場が1つの観光素材であるという考え方で、腰を据えて長期的な視野で発信して、発展させていかなければ、観光というのは長続きしないのではないかと思うのです。

観光というのは「国の光を見る」と書きますが、もしかすると観光素材というものは、光だけでなくて、生活そのもの、もしくは混沌としたもっと闇の部分みたいなものも含まれるのではないかと思っています。

○井戸

今、観光に関する総論的なものをお話しいただきました。その土地でたくましく生活している人たちの暮らし、生活なども観光にとって大事なことではないかというご指摘だったと思います。

それでは、今度は滋賀という地域と結びつけた上でお話をいただきたいと思います。

○広野

先ほど、中国の楊先生のお話を聞いて、国を挙げての観光政策というのはすごいなと思いました。10年経てば、日本人の中国への観光旅行はますます盛んになるでしょう。では中国の人は滋賀に来てくれるのだろうかということをチラツと考えました。昔、私が中国からのお客様をお迎えした時、界隈性のある大阪の通天閣のあたりに行くと大変喜ばれました。やはり違うもの、自分たちが持ってないものに対する意識をどうつくりあげていくかが、観光のひとつの課題だと思います。

そういう意味で見ると、滋賀県は風光明媚であり、大きな琵琶湖があり、山々もあり、本当にいろいろなものに恵まれています。でもそこに住む人の息づかい、熱意、愛着というものを感じさせなければ、各々の違いが明確になりません。それぞれの町の違いを1つのストーリー化していくことも、これからのまちづくりの中では大切なこととなるでしょう。滋賀県、特に琵琶湖を囲むそれぞれの町の個性の発揮というのが重要だと言えます。

今日、私が分科会でお話をしたいと思っているのは、元気な町をつくるためにはどうしたらいいのかということです。まず、自分たちの町の再発見・再認識させるための人の輪づくりから始めなければなりません。基本的にまちづくりは、そういう人の輪をどうつくるかということではないかと考えています。

○前田

地域資源というものは今、いろいろな角度から見直されています。それは、地域資源というものを単に神社仏閣の建物などの「物」としてよりも、「事」としてとらえていると言えます。歴史的な事実とか、ストーリーが、現代の地域社会にどう結びついているか。そういう、空間だけではなくて、時間軸をも含めた地域資源の見直しが大切だと思います。

 

 

 

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