○参加者
最初スタートする時に、社長にはあえて、行政の推した人をはねのけたというのは成功の1つの要因だったと思いますが、その後、こんなことをせよ、あんなことをせよと、行政から制限は加えられなかったのですか。
○清水
資本金比率で、当初民間が9,000万円で行政が4,000万円でした。増資してからも4億4,000万円の中で、市が1億4,000万円で、3分の1に満たない額です。極端なことを言えば、市の思いどおりに全くならないという会社です。
しかし、当初、「黒壁」を設立して何年かまでは、ある程度、行政がリーダーシップを取っていました。その後、だんだんと民間が力をつけていって今のような民間主導型になったのです。逆に行政がインフラ整備などで、後ろから追いかけているという状況になってきたということが今の長浜の状況です。
○参加者
ガラスの何が「黒壁」に合ったのか。やはり女性に受けることとか、値段が安いものから高いものまで設定できるとか、いろいろあると思うのですが、ガラスで成功した一番の要因は何でしょうか。
もう一点は、ここまできた以上、ガラス以外にさらにもう一つ、キーワードというか、核になるものを「黒壁」に付加しようという考え方があるのかどうか、お伺いしたいと思います。
○清水
なぜガラスがよかったか。時代的によかったということは確かにあると思います。まず、日本の中に既存ではあまりなかったものであるということ。例えば陶器、磁器の関係であれば、先発組がたくさんあります。そういった面ではガラスは非常によかった。また、ちょうどその頃から日本の国内全体的に、ガラスそのものが生活の中に根づいてきたという時代でもありました。そのことは非常に運がよかったと思います。
ただ、とにかくガラスの質を高めていこうということを一生懸命言っています。だからガラスのおみやげ屋ではなくて、ガラスを文化としてどこまで追求していくか、高めていくかというふうな視点が経営の中にありました。そのあたりもガラスが受け入れられた理由の1つではないかという気がします。
ただ単に物を売るのではなくて、ガラスを地域として全体的に展開していく。例えば今、カルチャースクールのようなもので、「ガラス大学」という名称でガラス講座をやっています。この卒業生が500人います。そうすると、人口5万人の中でガラス大学を卒業した人が500人。市民の100人に1人がガラスについて知っていることになります。これだけガラスについて知っている密度の高い町は、長浜が日本で絶対に一番だろう。さらに長浜市内の6つの小学校の5年生は、全員が「黒壁」で授業の一環としてガラス細工を楽しむということもやっています。
そのようにいろいろな形で、徐々に、外向きばかりではなくて、地域に住む人たちもガラスに対しての思いをどんどん高めていく工夫をしています。
また、今後についてですが、現段階ではあくまでもガラスにこだわろうという形にしています。一般客向きではありませんが、世界で数名しかいないガラス鑑定士という資格を持った方のお店を1店つくっています。