マケドニア王国のために、何がなされなくてはならないか」、これがフィリッポスの考えの出発点とするならば、アレクサンドロスの場合は、「おのれ自身のために何がなされなくてはならないか」という発想こそがまさしく、かれの追求すべき目的を規定したのだった。かれにとっては、おそらく王国も、軍隊も、所詮はかれ自身の不滅の栄光を達成するための道具であり、手段であるにすぎなかっただろう。それこそが、不滅の誉れに生きようとする英雄アキレウスの心情とまったく同質のものであり、そこにアキレウスに寄せるあの熱っぽい憧憬が生まれたのだった。アレクサンドロスはその意味では、世にも徹底した自己中心主義であった。それにしても何と巨大なエゴティストだったことか。