ドラエウロポス展示室では、ユーフラテス川沿いのヘレニズム、ローマ遺跡から出土した磁器、青銅製品、フレスコ画などが見られる。この地域からの出土品で最も貴重なものとされているのが2世紀半ばのユダヤ教会シナゴーグ壁画であるが、光による劣化を防ぐため、一般公開はされていない。
その他、アルファベットのもとになったと言われるラスンャムラ(ウガリット)から出土の楔形文字の書かれた粘土板など見逃せないものが多数ある。
しかし、館内の説明はフランス語が基本で、それに英語の説明がついているもの、いないものがまちまちである。説明も、手書きであったり、文字が小さかったりして読みにくい。また、館内の照明が不十分で薄暗くせっかくの展示品が見えないこともあった。見る側にたった展示方法を検討する必要がある。
2] スーク(市場)
ダマスカスの見所の一つにスーク(市場)がある。旧市街の中にあって最も有名かつ賑わいを見せているのがスーク・ハミディーヤで、入り口からの全長およそ600m、上をアーケードが覆っている。ここでは、金銀のアクセサリー、繊毯、民族色豊かな衣類などの店が道路の両側に隙間無く並び、シリアの田舎や近隣のアラブ国からの買い物客、その他外国からの観光客で一日中賑わいを見せる。スークの中を走る道路は買い物客、自動車、自転車、荷車であふれ、時間によっては身動きがとれない。店の客引きの声、自動車のクラクション、その他の音が混ざり合ってその騒々しさは想像を超える。
スーク・ハミディーヤと平行して走る“ストレートロード”にスーク・パシャがある。ここでは、おもに香辛料が扱われ、その匂いが付近一帯に立ちこめている。
この他にも、網の目のように張り巡らされた小路にそれぞれ店が並び、生地、タオル、糸やアイスクリーム、キャンディーなどが売られている。
3] ウマイヤド・モスク
スーク・ハミディーヤに沿って入口からまっすぐ進むとウマイヤド・モスクに突き当たる。紀元後1世紀頃のローマ時代にはローマ神ジュピターの神殿として、またローマ帝国がキリスト教に改宗後は、テオドシウス帝の命により聖ヨハネを祭る教会として改修された。636年、アラブ人によるダマスカス占領とそれに続くイスラム帝国成立後もキリスト教会として存続したが、ウマイア朝カリフ(アル・ワリッド)により715年イスラム教のモスクとして改築され今日に至っている。メッカ行きの巡礼者(特にイランのシーア派)がその途上で必ず立ち寄る聖なる場所となっている。
内壁は植物や自然をあしらったモザイク模様のタイルと色つきの金箔入りガラスで美しく飾られている。円形のドームは灰色を帯びた青色で、その天井の高さは見上げる者を圧倒する。また、互いに様式の違う3本のミナレット(尖塔)と聖ヨハネの首を納めたと言われる小会堂を含む広い礼拝スペースと広大な中庭を持つこのモスクは、イスラム世界のモスク建築のモデルとなっている。
4] サラディーン廟
ウマイヤド・モスクの北門の脇にある。1099年から1285年まで275年間続いた十字軍の、遠征時代、その襲撃からダマスカスを守り聖地エルサレムを回復したアラブの英雄サラディンの墓が安置されていると建物は、12世紀にサラディンの息子ウスマンによって建てられたイスラム神学校(アル・アジジエ)の一部が利用されている。サラディーンの墓と並んで、彼の恩人でもあるヌルアッディーン・ゼンギの基も安置されている。1899年にドイツ皇帝ウイリアム2世から送られた棺と天丼から吊されたシャンデノリアがあり、内部は大理石の多色モザイクで飾られている。