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第4セッション

 

ヨーロッパ拡大と東アジアへの意味合い

 

インドネシアCSIS会長

ユスフ・ワナンディ

 

1.はじめに

 

今は東アジアがヨーロッパの拡大から学ぶには最適ではないかもしれない。東アジアは同地域の金融・経済危機のため、いくぶん内向きになっている。一方ヨーロッパも西ヨーロッパの統合とヨーロッパ全体の将来にとり歴史的分岐点となるユーロに大きく注意を集中させている。 

ASEANやAPECなどの東アジアの地域機関はEUをモデルにすべきだという提案がしばらく前に出たが、この考えは支持を得られなかった。これには幾つか理由があるように思える。一つにはブリュッセルの官僚に権力が過度に集中したEUの制度化された正式なやり方より、"ASEAN方式"のほうが多様な東アジア地域に適しているということである。APECが貿易自由化を実施する際に、EU内で実施されている交渉を通じた法的な合意ではなく、加盟国の自主的な決定に基づいた"開かれた地域主義"の原則に固守しているのも、この理由からである。

東アジアとEUの様式がこのように違うのは、政治的秩序と哲学に違いがあるためだという議論がある。EUでは国家が経済に大きく介入してはならず、経済分野を含めた政策決定において市民社会の諸機関が重要な役割を果たす自由主義の原則に基づいているのに対し、東アジアでは伝統的に政府が経済に介入し、市民社会に別の選択肢を決定させる傾向が弱い。

東アジアの市民社会は西ヨーロッパほど発達しておらず、独立性も少ない。ヨーロッパでは経済は個々の経済のアクターが運営するものであると考えられているが、東アジアでは国家は社会全体の利害を代表しており、社会と国民の安定と安全を保障しているという考えがあるため、国家が経済を運営すべきだと依然考えられている。

APECにはアメリカ、カナダ、オーストラリアと、程度は低いもののニュージーランドというアングローサクソンの加盟国がある。こうした加盟国は当然EUの理想に近い考え方をしており、この意見の相違が時々表面化することがある。東アジアの加盟国は国家主権に関心を持ち、時として固執することがあるが、この傾向は地域安全保障を扱うARF(ASEAN地域フォーラム)でより顕著に見られてきた。他国への内政介入は長い間犯してはならない領域であると考えられており、 (ヨーロッパの安全保障と協力のための機関である) OSCEの例が東アジアで受け入れられるようになるには、まだ長い道程がある。

 

 

 

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