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特に、王政を経ず、民主制からスタートしたアメリカにおいては、そもそも政府の官職は、市民の所有に属するという考え方が強かったと言えます。そして、選挙により住民により選ばれた者が、政治的勝利の獲物として官職を自らの支援者に与えるという「猟官制」が展開されました。しかし、猟官制の下では、官僚に要求される事門性を軽視した人事が行われ、政治的利害が直接、公務遂行レベルにまで持ち込まれたため、非効率・偏向した行政が行われるようになり、猟官制はやがて後退しました。代わって、公務遂行の公正性、能率性を確保するため、能力主義に基づく公務員の任用が主流になっていきました。
20世紀後半には経済の高度成長と福祉国家への移行に伴い、行政に多くの情報が集中し、経済における公共支出の割合が高まっていきました。このように政府の権限が拡大し、政府の活動に対する住民のコントロールが及びにくくなると、民主主義の形骸化が指摘されるようになりました。このため、従来の議院内閣制・大統領制を補完し、主権者たる国民が実質的に行政を監視する手段として、情報公開、オンブズマン、住民投票などの制度を導入する国が増えてきました。現代の公務員は、公僕意識を持ちつつ、国民を行政遂行のパートナーとして認識し、開かれた行政を行うことが求められています。