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イギリスは過去に地方税としてドメスティック・レイツ(domesic rates)とノン・ドメスティック・レイツ(non-domestic rates)を持っていた。いずれも地方政府の管理の下にあり、異なる税率で課税されていたが、サッチャー政権下で後者は国税化され地方譲与税となった。おそらくノン・ドメスティック・レイツの時代には税率格差の存在が資本移動や転嫁問題を引起こしていたものと想像されるが、現在は中央政府のコントロールによって均一税率化したため、このような問題から解き放たれているであろう。

これに対してわが国では、地方分権の推進とともにこの税が統一的管理から自由になり、不均一税への道を模索している状況にある。

 

5 結びに替えて

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不均一の固定資産税の問題点として追加すべき問題に、資源配分上のディストーションがある。図を用いてこのことを説明しよう。横軸に資本量をとり、その長さで経済全体の資本量を測るとする。左のOXを原点としてX地域の限界生産力曲線が、OYを原点としてY地域の限界生産力曲線が描かれている。税の存在しない状況では、aが均衡点でありk*でXとYへの資本配分が最適となる。

ここでY地域に固定資産税が導入されるとY地域の税引き限界生産力線は下方にシフトし、新たな均衡点はc点に移る。X地域にもYと同率の税が導入されれば資本の最適配分点は依然としてk*であるが、Y地域のみに税が導入されたために、新しい均衡的な資本配分点はK'となる。その結果、三角形abcの面積に相当する非効率が発生する。これは資源のミス・アロケーションによるの税の超過である。不均一固定資産税はこのような非効率をもたらす恐れがある。

地方分権化の進行する中で、地方政府の課税上の権限強化を求めるのは当然の主張であるが、固定資産税に関してはここで述べた諸問題を十分に検討し、慎重に対応する必要があると考える。とくに税負担に対応する公共便益の内容や水準などについての詳細な情報を納税側に提供すべきことを強調しておきたい。

 

【注】

(1)例えば古くはA.Marshall、F.Y.Edgeworth、が挙げられ、またR.A.Musgrave et al.(1951), Distribution of Tax Payments by Income Groups:a Case Study for 1948,National Tax Journal, 4,1-53. R.Netzer(1966), Economics of the Property Tax,(Brookings, Washington)などがこの立場に属する。

 

 

 

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