4. 地方分権に対応した税務執行体制
(1)税務職員の育成
地方分権を支えていくには、地方団体が地方税をしっかりと徴収できる体制にしていかなければならない。そこで、地方の税務執行体制を支える税務職員の状況をみてみることにする。
まず、税務職員数の推移をみると、国が増加傾向であるのに対し、地方は全体として減少傾向にある(資料16)。平成9年度において、国の税務職員数は57,202人で、昭和50年度に比べて9%増加しているのに対し、地方の税務職員は84,491人で昭和50年度に比べて5%減少している。
また、税務職員の年齢構成をみても、新任職員はまず税務の職場で研鑽をつませるという人事方針をとっている地方団体もあり、税務職は一般行政職に比べて20代の若年層の職員が多くなっている(資料17)。特に市町村では、20代の税務職員の構成比の高さが顕著で、ベテランの40代、50代の税務職員の構成比が一般行政職に比べて低くなっている。
さらに、国税職員と違い、地方税務職員は他の行政分野との間での職員の異動が避けられず、数年サイクルの人事ローテーションが広く行われている現状では、税務分野における経験年数の少ない職員の割合が高くなりがちである。このため、国にくらべて地方では税務行政に関するノウハウをうまく蓄積していくことについての対策が必要ではないかという指摘もある。
こういった状況のもとで、適正かつ効率的な税務執行を確保するためには、職員研修を充実させるなど税務職員の育成が大きな課題となる。
また、後述するように、地方税の専門的知識を有する職員を育成していくためには、地方団体相互間における協力体制も重要になってくると考えられる。
アンケート調査においても、現在、地方税の賦課徴収事務で何が課題となっているかという問いに対して、「税務職員の育成」と答えた地方団体が全体の6割となっており、都道府県では4分の3、市では3分の2にのぼった。その理由としては「人事異動のサイクルが短く、ベテラン職員が不足し、またその育成が困難になっている」という答えが最も多かった。