はしがき
現在我が国は、21世紀に向けて大きな変革を迫られている。求められている改革は、一つには、我が国の諸制度を根本から見直し、世界の標準に近づけようということであり、一方で、国民一人一人の自立、地域の自立を高めようというものである。
このような時代においては、日本の文化的伝統、日本的価値を見つめなおし、日本人のアイデンティティを改めて問い直すとともに、地域住民が郷土を愛し、郷土に誇りと親しみをもって地域づくりに取り組む気運を盛り上げる必要がある。
我が国には、各地に伝説、神話、祭り、伝統芸能、伝統技能、習俗等いわば広い意味での歴史的遺産・伝統文化と呼べるものがたくさんある。しかし、生活様式や価値観の変化、さらには過疎化や高齢化の進展等により、国の重要無形文化財の指定を受けるなどにより世間的に関心が高いところの、一部の観光化された祭りやテレビ放送・出版物等で紹介された活動以外の歴史的遺産・伝統文化については、後継者も少なく、存亡の危機にあるといっても過言ではない状況である。
こうした問題意識の下に、当センターでは、「歴史的遺産・伝統文化の活用による地域おこし」をテーマとして、幅広い研究を行うため懇談会を設置したところである。
この報告書は、その結果をとりまとめたものであり、本報告書が、地方公共団体における文化・地域振興行政の一助となれば幸いである。
この調査研究を行うに当たり、御多忙のところ快く委員をお引き受けいただいた各位、そして種々の御指導と御協力をいただいた自治省はじめ関係地方公共団体の各位に対し、心から御礼を申し上げる次第である。
平成11年3月
財団法人 自治総合センター
理事長 湯浅利夫