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第4章 技術的指針

 

4.1 本章では、中央政府内で事前評価と評価を実施した場合に生ずる多くの技術的問題に対する指針を示し、選択肢の判別、費用便益分析、リスクと不確定要素の扱い方、さらに割引、意思決定規則、支出シーソングの役割について述べる。英国大蔵省からは、その他の技術的助言も得られる。

 

選択肢の判別

 

選択肢

4.2 重要な意思決定を行う場合には、たとえ初期段階で却下されるものが多くても、さまざまな選択肢を検討することが重要である。「何もしない」とか「最低限に留める」という選択肢は、通常、基準ケースとして特定すべきである。この選択肢は、サービスの提供を行わないとか、サービスの維持または提供に必要な最低投入量に制限するという場合である。(「何もしない」とか「最低限に留める」という選択肢も、もちろん、相対価格や需要レベルの変動予測といった情況を考慮に入れて、他の選択肢と同様評価しなければならない)。サービスの改善に関連する場合は、「最低限に留める」という選択肢が現行レベルのサービスを継続することを意味することもある。現実的な選択肢の選択が行われないという場合は滅多にない。

 

4.3 検討すべき選択肢の適正な数は、プロジェクトの規模と範囲に応じて異なる。通常は、選択肢が少ないものが全面的な分析が必要になるが、異例とか「ここでは評価は必要ない」という理由で却下したり、真剣に評価しないものを皆無とすべきである。時には、もっとコストのかかる他の選択肢に比べ便益が少ないという理由で簡単に削除される選択肢もあるが、そうした理由自体不十分なものである。少ない便益と費用節減につながらないという理由が重なれば、全面的な事前評価段階においてそうした選択肢を採択しない理由に当然なりうるが、明確な決定を下す際に十分な情報を入手する必要も生じよう。

 

制約条件

4.4 法律上、財政上または政治上の制約のために、技術的に実現可能な選択肢が締め出されそうになることもある。そうした選択肢の全面的評価に時間と労力を余り費やすべきではないが、この種の制約は必ずしも拘束力を持つものとは限らず、こうした制約があるのを当然とみなすべきではない。実質的費用にそうした制約が加えられそうな場合は、そうした制約を指摘して明確化する必要がある。同様に、技術的制約と言われるものも安易に受け入れるべきではない。何とか克服できる制約もあれば、費用を十分考慮せずに設けられた制約もある。

 

各種目標

4.5 関係省庁の事業計画や管理戦略に関連のある場合は、支出の全面的負担もしくは市場への介入に対する正当な理由づけが必要とされる。プロジェクトの目標は、たとえば省庁の報告書や政府の政策書に記載されているような省庁の戦略目的や戦略目標に関連したものとすべきである。共通の重要な事例を挙げると、使い古した施設を建替えるとか、何らかの安全策をとるといった理由から、支出を不可避なものとみなすべきではない。支出理由としては、事業を停止するとか、別のレベルのサービス提供に切り替えるとか、放出資産を転用するといった理由の方が良い。

 

 

 

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