序文
このガイドは、各種行政機関がその活動を効果的に事前評価かつ事後評価するための一助とし、行政全体に渡る事前・事後評価業務の整合性を図ることを目的としている。本書は1991年版を更新したものである1。
適正な意思決定を行うには、必ず事前評価を行う必要がある。適正な事前評価には柔軟性と想像力が求められる。事前評価というものは、厳格な規則通りに間違いなく進める儀式ではない。
事前評価では、政策上の決定が下される状況をも考慮する必要がある。多くの場合、こうした決定には、分析結果だけでなく、さらに幅広く戦略上、管理上考慮すべき点をも反映させる必要がある。適正な事前評価では、本書の手引き通りに、こうした点を明らかにし、十分情報に通じた上で判断を下すための枠組みを提示し、より適正な意思決定を行えるようにする。
本書では、事前評価と共に、事後評価の重要性をも指摘している。つまり、過去の決定事項を系統的に検討し、それらから教訓を得て将来の決定事項を改善化することを重視している。ひとたび決定が下されると、すぐ次に移行し、過ぎ去ったものは問い直さないという傾向ももちろん認められる。だが、こうした傾向は、将来の意思決定過程を改善できる極めて貴重な教訓の源を犠牲にするものである。本書の内容は、政府における評価をより一層体系的に実践できるようになるものと期待している。
本書は英国大蔵省の指針書であるが、政府全体のエコノミストと緊密に協力し、政府の社会調査専門官と協議した上で新たに改訂された。こうした関係諸氏のご支援とご鞭撻に対しては、深く感謝したい。各省庁においては、それぞれの情況に適合し、本書の内容とも整合する独自の個別ガイダンスを作成する必要があろう。
この最新版の本書も、既刊版と同様、有益な情報を提供するものとして認められることを期待したい。
ノーマン・グラス
副局長
主任ミクロエコノミスト
1 Economic Appraisal in Central Government: A Technical Guide for Government Departments, HM Treasury (HMSO 1991)