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先程から童門先生はじめ皆様方のご意見をお聞きする中、私の今まで思っていた事などを踏まえまして、地方分権に対する考えをお話したいと思います。私は、従来の地方自治というのは、商売でたとえますと全国チェーンのファミリーレストランのようなものではないかと思うわけでございます。本社が省庁でございまして、マニュアルを全て決めて地方の支社、県を通じて各レストランにマニュアル通り、同じメニュー、同じ味つけ、同じサービスを提供せよという指導をするわけでございます。しかし各地域では好みの味付けも違うし、地域においては好まれる食材も違うわけでございますが、各お店はお客にあった料理をしたり、名物料理をつくったりしたいと思うわけですが、それは本社や支社が許してくれません。だから結果としては、全国どこへ行っても同じ味つけの料理が出てくるわけでございます。ひどくまずいことはない、しかしおいしくもないという状況かと思うわけでございます。今まではそういうやり方が、効率がよく急速に売り上げを伸ばすことができました。最近は、お客様の好みも多様化し従業員にマニュアル通りの対応ではなく、もっと臨機応変に対応して欲しいというお客が増えてきました。だからマニュアルを全国の各お店に押しつけるのではなく、各お店、そして各支店が地域の好みや実情に応じた経営ができるようなシステムに変えていこうとするのが、今日の地方分権だと考えております。

私は地方分権は、どしどし進めていただきたいと思うわけでございます。しかし、システムが変更になっても支社の職員、そして各お店の従業員の知識・技術・経験が劣っていたり、お客へのサービスが変わらないというのでは、今まで通りのものを食べるという事になります。そうすると下手をすると本社の指導が少なくなった分、料理がおいしくなくなります。県や市町村の幹部や職員の方は、しっかり自覚をもってやっていただきたいと思うのでございます。

それから地方分権を進めるためには、住民にも痛みが伴うことを理解してもらうことが大切であります。今までは各レストランで出した赤字は、本社が補填をしてくれていました。しかし現在は本社の経営状況は非常に厳しいわけで、今までのような赤字補填は難しい状態にあります。当然そうなると、今までのメニューを絞り込まなければなりません。お客としては、今までの自分が好きなメニューはなくなってしまうこともあります。しかし赤字補填が少なくなるのは、全体の経営が厳しいからであって、決してこの地方分権を進める結果ではないということでございまして、お客も我慢をしなければならないと思います。しかし我慢ばっかりもしていられない。レストランに対して、きっちりとした市場調査をやった上でメニューを決めてくださいよと要求する必要があります。メニューを決めるのは、今後はお客との共同作業であるということであります。これからはレストランの経営判断を行う上では、お客の満足度というのが大きなウエイトを占めてくると思います。こういうことが基本的に分権型社会の姿だと思っております。

 

 

 

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