「舞台音響における機器の動向と改修計画及び安全性の確保」
(株)サウンドクラフト会長 日本PA校術者協議会理事長 八幡 泰彦
【最近の音響設備の傾向】
公立の文化施設の音響設備について、一般の商業施設と比較しながら。
ポイント1 年間を通して公的行事がどの程度あるか。
公立の文化施設にあってはこれらの公的行事が如何なるときでも安全且つ円滑に行われなければならないので、その点に留意するべきである。
その際に使われる設備、備品の数と内容を把握し、使いこなしと保守に心掛ける。
マイクの本数と種類、スタンドなど
ミキサーまでの回線、マイクコード、ボックスなど
ミキサーの使用チャンネルとスピーカーの選定(標準化)
付加機器の設定とそれに対する習熟(MD、CD、オープンテープレコーダー等)
そのほか考えられるが、これらは何時でも性能を発揮するべきなので、専用化を図らざるを得ない事もある。
ポイント2 自主事業などの運営にどの様に参加、協力するべきか。
自主事業や地域発の催しでは様々な要望や設備利用の要求がある。
その際殆どの場合設備をフルに使用したいと言った要望があり、殊に音量に対する
要求はエスカレートする傾向にある。これらの催しの殆どは演技者に対する音を(ホールドバック、モニター等)充分に、また客席での音量も大きくしたいとすることで、混乱することがある。ステージ内のスピーカーからの音は置き方により袖幕やパネルの陰になり音量が得られないことがある。最近の舞台は奥や袖が深く、吸われる傾向にあるので、スコーカ(400Hz以上)は塞がないように配慮するなど適正な配慮、アドバイスが必要である。オーバードライブにならないように注意しなければならない。
また持ち込みの機器を使う際の注意事項について
演奏や記録のために機器を持ち込みたいとの要望が多いが、出入力レベルについてはあまり問題にはならない。しかし、ミキサー等への繋ぎ込みについてはコネクターやコードについては問題がありそうである。ミキサーがバランス回路を採用しているにもかかわらず、モノーラルのプラグを、ささるからというだけでそのまま使用し、コネクターを破壊してしまう事がある。これは径が同じで構造は見えない事が原因であるが、使用者が規格を理解していないことが大きな理由で、周辺機器の開発と普及が更に追い打ちをかけている。
設備の施工者と共にアダプターや変換コード等を用意しつつ、再度規格に対する認識を普及させなければならない。
ポイント3 コンサートや演劇などの持ち込み機器に対しての考え方
コンサートや演劇が巡演する時、音響機器はすべて持ち込みと云うケースが既に定着したスタイルになっている。これは勿論セットアップの速さやチューニングの確実さの為であるが、重要なことは音色や音量も組み上げてツアーに出掛けるのが定着していることである。ホールの設備は殆ど使わないことは前に述べた性能維持のためには歓迎すべきことではあるものの、搬入搬出、リフトや搬入経路など改めて点検する必要がある。