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「舞台照明の基礎について」

日本大学芸術学部映画学科 教授 宮澤 誠一

 

【講義の概要】

1. 光は、演出上の重要な要素(アピアの理論)

○アドルフ・アピア(Adolphe Appia)ジュネーブ生まれ(1862〜1928)。舞台装置家。

○光は音楽と同様、全ての視覚の内的エッセンスに属するものを表示する。音楽と光とは神秘な因縁がある。

○光はただの視覚作用ではなく、表現力を持つ。

全体を照らす明かりと、部分の影を出すような明かりがある。

○劇作家は、光の色と形と動きと、その様々な交ぜ合わせによって無限の可能性の拡がりを作り出せる。

○舞台装置の面では、4次元的照明の構想と共に従来の絵画的装置を拒否し、新しい舞台様式の革命を提唱した。

○1908年パリの侯爵夫人ベアーンの私設小劇場での「マンフレートとカルメン」

=認められた。

1914年 チューリッヒ国際演劇展覧会

1922年 アムステルダム国際舞台美術展覧会

装置家として高い評価をえる。

 

○マリアノ・フォーチェニー(Mariano Fortuny)の半ドーム内壁のようなもので演技面を包めば観客席のどこから見ても見切れないで滑らかに連続した空を表現できるという、ホリゾント構想と合体し、これに完全拡散光を照射するとともにスポットライトを使用して演技を活き活きと見せる全体構想を完成させた。

 

2. 舞台照明の目的

☆よく見えるためのイルミネーション   ☆写実的効果を出すこと(写実主義)

☆舞台のコンポジションとデザインを助けるために舞台画面をつくる目的

☆彫像的表現を助ける   ☆心理的表現をする

☆視覚   ☆写実感   ☆コンポジション   ☆情緒

☆見えること(何が見え、何が見えないか、どのように見えるか、どの程度見えるか)

☆観客の注意力を集中するための焦点を制御する。

☆戯曲のリズムおよび構成を強調する。   ☆情緒の確立

☆写実的要素の確立   ☆舞台の照射   ☆光で描く   ☆投映   ☆色彩楽

☆視覚   ☆写実   ☆審美      ☆表現

 

(1)視覚

光の質(色、強弱)、照らされる方向によって舞台上の物の形が変わる。

1] 立体感の創出  2] 遠近感の創出  3] 色の選択  4] 照射面積の選択

(2)写実

舞台上で表現されている内容の真実性を高めて、観客に納得してもらうことが目的で、現実そのものを再現することが重要な要素ではない。(写実は虚偽なり)

1] 季節      2] 時間      3] 天候    4] 方向

(3)審美

美、醜を識別する力を持って、光の創作する。

照明だけが突出するのでなく、戯曲、演出、演技、装置、衣装、メイクなど舞台表現のあらゆる要素を考慮しなければならない。

意図に反し、観客の快感を阻害してはならない。

 

 

 

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