福建南曲・南曲・南管・南楽・管絃とも呼ばれる。そのほか蘢吹・什音・北管・錦歌などの民間音楽がある。民間芸能としては鯉城区の拍胸舞・車鼓・大鼓吹隊、惠安地域の献金鑼、永春地域の鼓隊舞、獅子舞には石獅地域の醒獅・徳化地域の獅灯舞、そのほか採茶舞・彩求舞・惠女舞などが有名である。
泉州芸能学 これらの芸能は、糸操り人形劇と直接的あるいは間接的に関わりを持ってきた。例えば、大勢の男性が上半身裸で胸を叩きながら踊る拍胸舞は、旅芸人の芸であったといわれているが、「蘆俊戯」という演目の中で、正月の祝いに大名府へ芸を披露しにやってくる芸人の持ち芸の一つとして、人形達がその姿を写し取っている。梨園戯・打城戯とは楽器編成や演目が、南音とは楽曲が共通している。そしてなにより、これらの芸能が観客層を共有していることがあげられる。しかも、その観客層が厚いのである。人々は日々様々な芸能を無料あるいは格安の料金で堪能することができる。私も泉州に滞在している間に、どれを見に行こうか贅沢な選択で悩まされていた。泉州というところは、インドネシアのバリ島や沖縄に匹敵する芸能の宝庫である。ここには「泉州芸能学」を設立するに足るだけの、芸能文化が溢れているのである。泉州でのこのような芸能が今後も伝承され、生き続けることを願っている。
山本宏子〈民族音楽研究家〉
【図書紹介】
オール見世物 珍奇世界社刊
本邦初のビジュアル系見世物本。
見世物小屋に掲げられた絵看板約九〇枚の写真を中心に、蛇女、狼少女、蜘蛛娘など因果モノから猿犬サーカス、学者犬、女相撲、仮設ストリップまで芸人さんや小屋などの貴重な古写真を多数収録。そのまま文章化した呼び込みさんの口上も一七パターン楽しめます(文章の一部は呼び込みさん本人の自筆です)。
A4ヨコ判オールカラー一五二ページ。パノラマサイドの絵看板を切れ目なく味わえる観音開きページが多いリング綴じの特注製本で、絵看板のポストカードと見世物小屋の紙模型のオマケ付きと世紀末的豪華版。本体9800円。
個人出版なため一般書店では人手困難。直売の問い合わせ先はTel.Fax042-525-3528まで
北タイ焼畑の村[天地有情] 小松光一著
橋本鉱二撮影
十年前、北タイに位置するチェンライ近くの山奥からラフ族の一青年、ダイエー君が農業研修のため来日した。彼を気持ちよく受け入れたのが、著者の小松さんやカメラマンの橋本さんをはじめとする、千葉県東金市で有機農業を行っている有志で、その名を山武ボランティア協会という。これを契機にタイの少数氏族の人々と千葉の農家の人々との交流が始まり、少数民族が生きていくためには何を援助しなければならないのか、開発とは、豊かな生活とは何かを共に考えていこうとする。考えに考え抜き七転八倒の末、著者は「貧乏で何が悪い」と開き直り、幻想を抱き安易な経済効率の良い生活を戒めているのが好感を持てる。手始めに子供たちの教育のために、町に寮を作ることから共同作業が始まる。また、ラフ族の人々に焼畑農業からの脱却のため研修農場を作り、質の高い農業を目指そうとする。
また、ダイエー君とその父を五〇数年ぶりに故郷の中国雲南省へ連れて行く。しかし、現地では、旧住人が戻ってくるのではないかと警戒心を強め、複雑な思いで帰国した。
ダイエー君を取り巻く様々なエピソードが展開するが、最近、日本の若者が村に入り、ボランティア活動をする。そこで「与える」「与えられる」の関係に疑問を抱いた若者が、援助とはいったいなんなのかを問うていることも著者は真剣に受け止めていく。そして日本を始め資金援助を余りにも安易にやりすぎていること警告を発しているのはさすがである。三一書房1800円
【講座案内】
アジア理解講座