シルク・バロックの公演作品「カンディード」より。[撮影 丸山智 提供 世田谷パブリックシアター]
サーカス界変貌の大きなうねりは、イギリスよりもフランスで起きている。ヌーヴォー・シルクといわれるたくさんの新しいサーカス団の出現である。どうして、それがフランスで起きつつあるのか。フランスではもともと、サーカス、大道芸、放浪芸、アクロバット、パントマイム、道化芸などが人々のあいだで愛され育てられてきた。ここでは、演劇や舞踊などの「高尚」なアートばかりでなく、豊かで大衆的な身体文化が根付いてきたのである。国中に私立のサーカス学校がたくさんあり、国立のサーカス学校も一九八五年に生まれている。そんな環境のなかで、わが国だったら演劇を志したりロックミュージシャンになりたがる若者がいるように、フランスでは十代のころからサーカスを志す若者たちがいる。塾通いの少年少女は日本列島にいくらでも溢れているけれど、「サーカスをやりたい」などという少年少女はいったい何人いるだろうか。