・周辺は、伝統的な様式で建てられている民家や土塀が多く有り、町の総合計画において、「歴史・文化ゾーン」として位置づけられている。
・本調査を通じて、保存活用を考え、それを担っていく住民組織が形成されつつある。
2] 制約条件及び課題
保存活用するにあたっての制約条件や課題も多く存在する。それをまとめると次のようになる。
・広域的な集客施設(観光施設、宿泊施設等)とするには立地条件に難がある。
・当地にアプローチする道路が狭い。
・建物規模が大きく、町で全てを保存活用のための整備を行うとなれば、多大な費用を要する。完成後の維持管理費用も同様である。
・建物内部の柱の林立は、そのまま利用するとすれば制約が大きい。
・そのまま保存活用を図るとすれば、大規模な木造建築物となるので、法的制限(特に防災面)が多くかかってくる。
(3) 整備の基本理念・基本方針
以上から、旧中林綿布工場の整備に対する基本理念・基本方針を次のように設定した。
基本理念
熊取町の歴史・文化の継承と新しい創造を目指した交流拠点づくり
【整備の基本方針】
1] 中家をはじめとして周辺地域を歴史・文化ゾーンとして一体的整備を図る。
2] 出来るだけ煉瓦を活かした保存型の整備を図りつつ、魅力ある新しい空間創造を図る。
3] 様々な活力を寄せ合い、多くの人の交流が図れる複合的な施設整備を図る。
4] 多くの人のまちづくりの力が結集できる計画づくり、運営方針で整備を図る。
7-3 各計画の提言
基本的な整備の方向を受けて、1]旧中林綿布工場保存活用計画、2]周辺整備計画、3]広域連携計画、4]段階計画・ソフト計画の4つについての提言を行う。
(1) 旧中林綿布工場保存活用計画
本計画は工場敷地の保存と活用についての基本的な計画の考え方を示すものである。
【導入機能と整備施設】
ワークショップを通じて、実に多岐に渡る施設提案がなされたが、分かりやすくするためには、出来るだけシンプルに機能の集約を行ったほうが良いと考えられる。そこで本提言では導入機能を3つに集約した。
●3つの導入機能
1]歴史・文化の保存と継承
建物自体が歴史的建造物であり、その保存が重要であるが、整備の施設としてはいわゆる「歴史博物館」ということになろう。ただ、博物館といっても、できるだけ利用もしやすく、多くの人が楽しめる工夫が必要である。以下、ワークショップの議論を踏まえ、参考となる考え方(メニュー)をあげるものとする。
・博物館機能といっても、対象とする地域、目的によって、様々なタイプが考えられる。
・地域対象としては、地区周辺、熊取町、泉州地域、大阪府域等が考えられる。