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第5章 建築計画について

 

(1) 建築の評価

1] 建築遺産として

近代産業の発展にかかわる産業用建築物の遺産大阪の繊維産業とともにあった地域文化、風景の保存。

 

2] 建築技術史からみて

明治から大正時代における日本近代化のなかで西洋建築技術の吸収の過程をみる事が出来る一建築物、現存する希少な木造のこぎり屋根構造和風の大工の仕口との混淆を知ることが出来る。

 

3] 現存状況について

屋根瓦のずれ、破損、野地板の腐食が部分的に見られる。瓦は風化している恐れがある。特殊勾配のためか、棟押えの瓦がなく、セメントで固めてある。この部分もクラックが入って雨漏りの原因となっている。(風対策であったかも)

ガラス窓の破損は多く見られる。ガラスは押縁のみで止められてある。かえって水切の良さ、収縮の楽な良さがあったのか。

木枠の腐食がある。雨漏りから天井板の腐食は相当見られる。樋の破損も多い。雨漏りのきついところで一部梁の腐食とクリープが顕著に見られる。屋根が波打ってまた破壊を加速している。

床板の腐食、排水溝の破損は全面に渡っている。雨漏りによる湿気の発生と、工場が閉鎖されたための換気の悪さが原因と見られる。

煉瓦壁の亀裂は、随所に見られる。セメントの老化、地震などによる亀裂、不等沈下によるものか、今後の調査が必要である。

しかし、建築後の年月、産業の衰退による過酷な利用状況メンテ不足などを考えればむしろ、相当良好な状態とも考えられる。特に床の不等沈下は無い様に見える。一般的な意味での、修理保存は十分可能であると判断できる。

 

(2) 立地条件と敷地に対する評価

敷地はJR熊取駅に近く、隣にある中家住宅を始め古い民家が現存する一角にある。前の工場跡の空地も十分あるので、景観としても現実の利用としても十分活用可な空間と考える。敷地はすべて平坦でアクセス道路ともほとんど高低差がない。従って高齢者や幼児の利用を目的とする施設には、打って付けである。

一方敷地までのアクセス道路の道幅は3メートル前後と狭く、大型パスなどのアクセスは現状では不可能なこと。また工場は敷地の大部分で境界ぎりぎりに外壁煉瓦壁が立てられているので、建物の入口は一方に限られるている事など、一般広域からの集客は相当難しい状況。また現実に避難及び消火活動などにも多少支障がある。又建物周囲の緑化などもなかなかこのままでは困難な状況である。

 

(3) 保存と活用の可能性

歴史的保存、文化財として、博物館などが考えられるが、新しい活用方法を中心に考えないと継続性がないし、将来性がない。しかし活用方法として従来方々で提案されてきた多目的ホールとか展示館など不特定な文化施設が中心では、建設費に多額を要する割に十分活用されることなくて維持管理費が出るか不安な時代である。フォーラムで見られる住民の意見のように、むしろ小規模でも地域中心で例えば地場産業を若者に地域として伝承していく館とか、あるいは老人から子供に遊びや道具作り方講習会場など具体的な地域の施設としての活用を考えられればと思う。特に老人時代を迎えていきいきとした老人と子供の施設を是非考えて欲しい。

広域不特定客の観光施設等とするにはアクセスと知名度から困難が多いと思う。小規模な観光施設には交通の利便性と他の観光スポットとのタイアップが必要と思う。現実としてはかなりの困難を伴うと考える。

 

 

 

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