そのガラス窓はいくぶん破損していますが年月から考えるとじつに丈夫な構造で、ルーズにおさまっているという日本独特の技術ではないかと思います。
建築基準法的に見ると3,000m2以上の木造建築になるので規制が多い。古い建物でもあらゆる規制の適応をうける必要があるかという問題もあるが、大きな建物に不特定多数の人が集まるものには、防災上の規制や必要な設備は必要になる。現状のままで利用するのは難しいがブロック化して、例えばパティオを設けるなどして建物を分散して利用していく方法は考えられる。
○建築構造について(西澤英和先生)
建物は古くなっているが、建物の主要部分はかなりしっかりしている。外壁はレンガですが内部は和のトラスで当時の大工さんが手慣れた技法でつくられています。補修については歴史的建造物という視点を守りながら基本的に地元の大工さんや左官屋さんにつくってもらうのが一番ではないか。
瓦屋根の下には葺き土によって断熱の効果があり、ノコギリ屋根の北向きの自然採光は室内を一定の明るさに保ち、レンガは土壁と同じく水気を多く吸い取り、また放出するので湿度環境がよいなど実にエコロジーに考えれられています。
これは先人が残したかけがえのない歴史的建造物です。オリジナルなものは残しながら修繕していくことが大切。煉瓦建造物は地震によってつぶれるものとつぶれないものがありますが、これはつくり手によって変わってくる。地震に対する補強は必要だが難しいものではない。耐震のための補強はあくまで黒子で建物の中で大きな顔をしてはいけない。今することと後ですることを考えて大事なところから少しづつ進めていけばよい。
建物の保存について旗上げアンケートで会場の意見を聞くと、大胆に改造をするが9名に対し工場の形をなるべく残したいが32名であった。
○地元からの意見として(中西昭太郎さん)
中林のそばで生まれ育った。子どものころは遊び場でもあった。商工会事業で中林の保存活用の問題に取り組んでおり、住民の意識調査などもしています。そこでの要望としては、公園、レストラン、ホール、川の整備が上がっています。また、中林の名称がバラバラなので統一した方がいいとも思います。
舞鶴、洲本、神戸と建物も違うし環境も違う。熊取には熊取に合った保存活用があると思います。似町に合ったみんなが十分に利用できるものになればよいと思います。土地にあった、誰が来られても恥ずかしくないもの、どろくさく考えてまたとっぴな発想もあって、皆さんと話し合いながら進めていきたい。
○近代化遺産の全国的動向(米山淳一さん)
全国的に近代化遺産を活かしたまちづくりを取り組みはじめています。(全国の近代化遺産をスライドで紹介)全国近代化遺産活用協議会というのが発足して、ナショナルトラストではその事務局をすることになりました。文化庁では近代化遺産という言葉を使っていますが、世界的には産業遺産と言っています。文化財というと寺社などが思いつかれますが、産業遺産は近代の文化財です。明治のころのものだとか、身近に生きているものです。産業遺産の取り組みは、国、自治体、市民、企業と全国に広がっています。