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調査した土蔵は、外観から軒先に方杖をもつ土蔵と、もたない土蔵に大きく分けられる。方杖をもたない土蔵はさらに軒裏を見せるものと、見せないものに分けられる。軒裏を見せるものは置き屋根の蔵(鞘堂形式)と、城や町家にみられる塗り込めの蔵(塗家形式)に細分される。方杖をもつ土蔵は調査土蔵216棟の内約75%にあたる160棟を占めており、大野を代表する蔵の形式とみなすことができる。さらに鞘堂形式の蔵は1棟あるが、軒先に方杖を使用しており方杖形式の土蔵とみることもでき、方杖形式の土蔵の総数は161棟となる。一方残りの55棟の蔵が軒裏を見せない形式や塗家形式である。このため、大野市内には方杖形式の土蔵をいたる所でみることができる。

以上より、大野市内に残る土蔵は、大きさが桁行3〜4間梁行2〜3間、切妻造り瓦葺、軒先に方杖をもち、鉢巻漆喰塗り、腰部下見板張りの外観をもつものが代表的となる。ここで特徴的なことは、軒先に方杖もつ形式の蔵であることである。そこで以下では軒先に方杖もつ形式の蔵を「大野蔵」と称する。

3) 土蔵の用途

大野市内に残る土蔵は、普通納戸(衣装蔵)として使用されるが、酒造業などの商家では味噌蔵、米蔵等の商売用の蔵としても使用され、特に大きな土蔵は商品倉庫として使用されている。また、一般住宅では蔵座敷として建設された蔵もある。

4) 「大野蔵」の特徴

(1) 屋根の構造

「大野蔵」の屋根仕上げは瓦葺や金属板葺であるが、その下地には垂木を使用する蔵と、使用しない野地板のみの蔵がある。垂木を使用する蔵は一般工法で、上から野地板、垂木、母屋となり、その下に塗り込められた土蔵本体となる。この場合、方杖は垂木先端の下に取り付く出桁を支える。一方、野地板のみの蔵は直接土蔵本体の上に野地板が載り、その上に屋根が葺かれることになるため、軒先・螻羽を出す工夫が必要となる。

 

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