5 水田の分布
図は、平成3〜5(1991〜93)年時点における水田の分布を表わした。現在は、更に水田は減少しているものと考えられる。
仙田地区における特徴は大きく2点にまとめられる。1つは、江戸時代における渋海川沿いの瀬違いによって造られた新田と、渋海川支流のマブ(間府・間歩)によって広げられた水田が挙げられる。そしてもう一つは、主に渋海川と魚沼丘陵の中腹に連なる地すべり地形に広がる棚田の水田である。これら2つの特徴的な水田の分布は、河川および丘陵の地形に沿って並行に続いており、南北に大きく2つの水田の帯ができている。
近年、仙田地区の人口減少、農業就労者の高齢化・減少、減反政策などによって水田は減少している。耕作されなくなった水田は一部、ソバ畑などの仙田地区の新しい作物への転換も図っているが、多くの休耕田は荒れ地やヤブ化している状況にある。
水田は、稲作という生産空間であると同時に、春の樹木の芽吹きと田植えのころの水鏡、夏の緑、秋の稲穂の黄金色と、季節を象徴する風景をつくり出している。特に仙田地区においては、晩秋の稲刈り後に水田に水を張った様子は紅葉の裏山を映し出し、独特な美しい風景が出現する。秋に水を張ることは、平坦地の水田にはあまり見受けられない。これは、地すべり地形の上にある棚田が、秋から冬にかけて乾燥して崩れないようにする工夫である。
6 ハサ木の分布
ハサ木(ハサギ・稲架木・稲掛木)は、刈り取った稲を天日で干しより良い味の米を作るため、また藁を干すために利用されてきた。しかし、稲を干すことが少なくなったことによって、また圃場整備時の大区画化に伴う伐採で全国的に減少している。しかし、地形が複雑な魚沼丘陵地域には、圃場整備をしない水田沿いに多くのハサ木が残されている。
一般に低地ではトネリコ(タモ)やハンノキ、山間地はスギが植栽されて利用される。しかし、仙田地区には珍しい稲架木も点在し、多様なハサ木が今も生育している。仙田地区にもトネリコ、スギは多く見られる。珍しい樹種としては、ケヤキ、コハウチワカエデ(モミジ)、サワグルミ、コブシ、イチョウ、カキノキなどがある。これらは、花が見られる・葉が美しい(鑑賞用)、実が採れる(実用)など生活空間に近いものが多い。また、国道403号線(通称、河鹿ライン)の渋海川沿いではシロヤナギの並木道となっている。更に、高倉集落にはスズカケノキ(プラタナス)といった外来種のハサ木も見られる。
ハサ木の多くは、水田の周囲、特に集落に近いか道路沿いに多く分布している。これらは住民以外の観光客にとっても鑑賞の対象となる要素である。
現在はハサ木の持つ本来の機能が失われても、垂直の幹が水田の水平な風景にアクセントをつける重要な景観要素でもある。これは、仙田地区のシンボル的な存在(ランドマーク)になりうる。