3.2 衛星画像の比較
1998年2月8日の事例について、様々な衛星によるオホーツク海の海氷観測画像を比較してみる。気象衛星ひまわり、NOAAによる衛星画像(気象庁海上気象課より提供)に加えて、カナダのRADARSAT衛星のScanSARモードによる合成開口レーダ画像(リモート・センシング技術センター提供)、及び、地球観測衛星SPOT2とJERS1による可視画像を比較した。図3.1から図3.4には各衛星による海氷画像を示す。
ひまわり、NOAAは図3.1に示した範囲を越えて、オホーツク海全域にわたるかなり広範囲の観測が可能である。しかしながら、2月8日当日は北海道東方は薄い雲に覆われており、この画像だけから海氷域と雲域を判別するのは非常に困難である。気象庁における海氷解析では、前後時間のひまわり画像の変化を調べて雲域を判別する、という解析が行われている。
図3.2に示すように、RADARSATの合成開口レーダ画像は天候の影響を受けることなく、海氷の分布を鮮明に捉えることが可能である。ScanSARモードでは分解能を約100mにおとして500km四方の広範囲の観測を可能としているが、Fineモードでは分解能約10mの観測も可能である。合成開口レーダではマイクロ波の後方散乱電力を測定しているため、海面に風が吹いてさざ波のある状態でも白っぽく写し出される。画像の濃淡だけから海氷域と海面のさざ波域を分離するのは困難である、という問題点が残されている。
SPOT2およびJERS1衛星の可視画像を図3.3および図3.4に示した。両者とも分解能約20mであり、海氷の微細な構造がよく分かる。
図3.5と図3.6には、RADARSAT、SPOT2、JERS1の3つの衛星による約50km四方の同一観測エリアを拡大して示した。図3.5では直径数kmもあるような大きな氷盤が見られる。SPOT2、JERS1では氷盤はほぼ一様に白く写し出されているのに対し、RADARSATでは個々の氷盤毎に明るさが異なっている。これは氷盤表面の後方散乱の差であるから、表面の粗さが異なることを意味している。RADARSAT画像で暗く写っている氷盤の表面は滑らかであることが推定される。図3.6では細かな氷が海流や風によって流され、渦状の構造を示している。海氷域はRADARSATでは同程度の濃淡を示すのに対して、SPOT2やJERS1では濃淡の変化が見られる。
これらのセンサーによる海氷画像の違いと、現地での海氷状態との対応を詳しく調べていけば、様々な衛星画像から海氷状態を推定することが可能となるのではないかと期待される。