日本財団 図書館


5. 海面水温の補正

 

以上の布製および木製バケツモデルを用いて実際の温度降下量(補正値)を求める際には、観測に用いられたバケツの種類や船舶速度等の変遷を定めねばならない。C.K.Follandら(1995)は、年代毎に布製バケツモデルと木製バケツモデルの適用比率(それぞれCB・WB、0≦CB≦1、WB=1-CB)と、低速船舶と高速船舶の比率(それぞれSS・FS、0≦SS≦1、FS=1-SS)を与えた。実際には各モデルの結果にこれらの係数を乗じて各時代における海面水温の補正値を求めている。具体的な係数を表6に示す。

 

表6 布製・木製バケツの適用比率および低速船舶と高速船舶の比率

089-1.gif

*表中のYは西暦である。

 

Xws、Xwf、Xcs、Xcfをそれぞれ木製バケツ・低速船舶、木製バケツ・高速船舶、布製バケツ・低速船舶、布製バケツ・高速船舶のモデルの結果とすると、求める補正値Xは以下の式(17)によって決定する。

 

089-2.gif

 

6. おわりに

 

C.K.Follandら(1995)は、布製バケツと木製バケツのみを用いており、日本の船舶により使用されていたゴム製バケツなどは考慮していない。また、1941年で突然補正を打ち切っていることや、バケツの種類や船舶速度等の変遷に関して明確な根拠を述べていないなど、不明確な面もある。しかし、この方法は物理的な過程を忠実に評価した方法であり、仮に完璧な評価方法が存在するならば、それからかけ離れたものではなく、現段階において最も信頼できる方法と考えられる。 従って本報告では、歴史的船舶観測データの海面水温の補正にこのバケツモデルを用いることとした。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION