図5 1860年〜1949年平均の1月の潜熱フラックスの分布図。単位はW/m2で、等値線は20W/m2間隔である。色付け方は図3、4とは異なっている。
潜熱フラックスの大きな値は日本の南方海上の亜熱帯循環系の内側に見られ、最大240W/m2以上に及ぶ。また2次的な極大が亜熱帯中央やや西寄りにも見られる。この分布の様子は、Iwasaka and Hanawa (1990) と比較すると、日本南方のフラックスの大きな海域がより南まで張り出していること、2次的極大が亜熱帯中央西寄りに見られること、フラックスの値の大きさが10〜20%程度小さくなっていること等が特徴的である。さらに、分布に空間スケールの小さな構造が認められ、月平均気候値の値にはやや大きな誤差が含まれている可能性を示している。
4 1950年〜1990年の平均値との比較
図3〜5に示した1860年〜1949年平均の潜熱、顕熱フラックスの気候値は、3節で述べたように、空間構造はほぼこれまで知られている気候値と同じであるが値が多少小さくなっている。それを具体的に見るために、1950年〜1990年平均値と比較する。
図6、7に潜熱と顕熱の1950年〜1990年平均値の年平均気候値をそれぞれ示す。図3、4と比較すると分かるように、それぞれの熱フラックス分布の空間構造は二つの年代ともよく似ている。しかし、値を比べると、潜熱では最大40W/m2、顕熱では最大10W/m2も1860年〜1949年平均値の方が小さくなっている。1950年〜1990年平均を基準にすれば25%程度の過小評価ということになる。この差はきわめて大きく、現実に起こったことであるとするならば、何らかの気候系の体制自体が変化した可能性もある。
そこで、各気象要素のそれぞれの期間の気候値を比較してみたところ、風速の気候値に顕著な差が認められた。それらの様子を図8、9に示す。