3.1.6 実験結果の評価
「ポケットベルを活用した同報」という伝達手段は、
・初期投資および維持経費ともに安価であること
・サービスエリアが広域であること(最近は、地下街などでも受信可能な状況となってきている)
・情報の2次的な活用が可能なこと(RS-232Cにより信号を取り出すことが可能)
・携帯が容易なこと
などの長所を有しており、個人や移動体に情報伝達をする方法としては優れたものである。
しかしながら、「地震時の即時的情報」を伝達する手段として見た場合には、伝達時間が長いという欠点を有している。
そこで、伝達時間を短縮する方法として、情報を差別化し、優先すべき情報である場合には蓄積されている通常の情報を追い越して処理することを可能とするように処理ソフトの改良を施した。(昨年度はその基本設計を行い、今年度は、その機能の実現を図り、それが正常に動作することを確認した。)
この改良により、情報の蓄積量が多い場合でも、ほぼ1分以内には情報を伝達することが可能となった。トラヒックが多く輻輳状態にある場合には、伝達に4〜5分もの時間を要し、さらに輻輳状態が激しくなった場合には情報が受け付けられないこともあったことを考えると、地震防災に係る情報の伝達手段として格段に改善されたと評価される。
今回の改良によって、津波情報など、地震発生後の情報のうち緊急性を有し、かつ地震波による被害発生に対処することに比して対応に若干の時間的余裕を有する情報の伝達手段としては、より有効なものになったと判断される。
ただし、伝達に要する時間は、地震波による被害を軽減することを目的とした「地震時の即時的情報」を伝達する手段としては十分に短くなったとはいい難いことから、さらに伝達時間の短縮を目指した検討を進めていくことが望まれる。