日本財団 図書館


山村教授(コーディネーター)

CHOさんが盛んに保養が大切といっていますが、釜谷ではいかがでしょうか。ちゃんとした医療施設、医師がいるのでしょうか。

 

Kyung-Do CHO氏(韓国)

温泉専門の医師を日本の病院で研修させ、ヨーロッパに留学させることを考えています。釜谷にはまだ施設はありません。まだ、本格的に実施はしていないが、「保養」ということを声高にし、プロモーションしています。今、手をつけ始めたところです。

Paul SIMONS氏(英国)に質問です。バースの温泉について分析した本を読んだのですが、鉱泉水の利用を止めてしまったのは1970年代に国から補助金が出なくなったこと、保険が適用されないので予防医学的な利用をされなくなったこと、そして裕福な人々が他のヨーロッパの温泉へ出かけて行ってしまうようになったことが理由でしょうか。

 

Paul SIMONS氏(英国)

基本的にはそうです。温泉の建物のうち古いものは250年前に建てられたもので、100年毎に補修工事が行われています。バースの温泉は第1次大戦後には戦争負傷者の治療に利用されましたが、このことは温泉の印象を悪くしました。1940年代にも第2次大戦で同様に利用されましたが、療養者数は第1次大戦当時と比べて3分の1程度でした。その後、温泉は利用されず、放っておかれました。1950年代には医学は薬を使用した治療へ移行し、新しい病院、手術、化学的療法が台頭し、自然療法は廃れました。そして、裕福な人々はより気候の良いドイツ、イタリア、フランスへ行くようになりました。それが当時の流行でもあったのです。現代でも温泉を医療目的でなく、「流行」とすることが必要です。ただし、現在、温泉の予防的医学的な効果に注目が集まって来ています。

 

Kyung-Do CHO氏(韓国)

バースの温泉水には脳膜炎を引き起こすアメーバがおり、飲用できないとの資料を読んだことがありますが、本当でしょうか。

 

Paul SIMONS氏(英国)

はい、そうです。ニュージーランド、チェコ、南アフリカなどでも発見されている温泉水に存在するアメーバのことです。ごく稀にある地層から温泉水に混入するのですが、人間の鼻の粘膜から脳に入り、髄膜炎を引き起こし、死亡する場合もあります。英国では1人、ニュージーランドでは1930年代に6人、チェコでは1960年代に14名が死亡しています。今は温泉水をフィルターでろ過しています。

 

山村教授

明日の論点は「美容、医療」がキーワードとなります。もう1つは、「温泉文化、地域づくり、環境保全、町並み」などについてとなります。後者のテーマについて何か意見はありますか。

 

Paul SIMONS氏(英国)

新しい組織ですが「European Spa Association」という団体があり、「欧州基準」を取り決めています。その「欧州基準」の項目は、「天然鉱水であること、入浴が可能なこと、幅の広い料金設定がされていること、宿泊施設があること、ショッピングエリアが充実していること、空気が良いこと、音楽イベント等があること、フランスではカジノがあること」などとなっています。「欧州基準」は山村教授の質問に対する回答を出していると思います。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION