そこに幾つかの課題を掲げておりますが、「モビリティ格差の問題」とくにこれは車を使える人と使えない人ということで、高齢者・障害者との関わりでかなり重要になると思います。また、中心市街地の問題ということで中心地の活力が低下し、衰退するという問題がありますが、これも交通と非常に密接な関係があると考えております。とくにこれは、公共交通とマイカーのバランスをいかにうまくとっていくかという点で重要と思っています。
また、環境問題については、自動車依存ということで様々な問題が起こっていますが、ご承知のとおり地球環境問題に関して、わが国は2010年前後までに1990年レベルから6%減少させようということになっております。ただ、走行台キロでみる限りでは、1990年レベルに対して既に10数%近く増加しており、趨勢でいきますと2010年には40%増になると予想されています。ということは、走行台キロだけで目標を達成するとなれば相当の量を減らさなければならないという非常に大きな課題となっています。環境庁では、こういうことを含めて地球温暖化に対する対応の中で交通をどうしたらよいか、とくに交通は産業部門と違いまして伸びの趨勢が非常に大きい分野であり、ここでどのような合理化や排出量の削減を図れるかということが鍵だといわれています。
そのときに、マイカーやマイトラックに代わる別の交通手段を整備していくことが基本と考えられます。そういう意味で都市旅客交通におきましてはバスを中心とした公共交通の役割が非常に大きいと思います。
また、こういった問題の中で自動車というのは非常に便利な乗物であり、これを上手く使っていく、問題のない形で使う、あるいは電気自動車、低公害車、燃費の良い車というように問題なく使えるような自動車に進化させることと、その使い方について合理化していく必要があります。ただその際には、自動車だけを考えるのではなく、自動車以外の公共交通、徒歩、自転車等を含めた総合的な交通政策の中で考える必要があります。
(3) 新しい交通政策の目標
こうした意味で新しい交通政策の目標ということで世界的に一般化されていますのが持続可能性をベースとした「持続可能な交通」、「持続可能なモビリティ」という言い方がされています。国際的には環境という面で、交通で一番問題となります交通事故の問題、次いで生活環境への問題があり、これを重視していかなければならない。ショッキングな事例として、今年7月に英国政府より出されました新しい交通政策の中で、自動車車内の汚染レベルについて歩行者の汚染レベルよりも数倍高いということが出ており、英国政府としてはそれを憂慮しているという記述がありました。日本のデータはわかりませんが、少なくとも車外と同じレベルというのは想定できますが、車外よりも高いレベルで大気汚染物質が蓄積しているということはわかりかねますが、確かにガレージの中などで排ガスを蓄え、その状態で町中に出ていったとしたならば、車内のレベルは高いものとなるであろう。このような状況であれば、運転者自身が高いレベルの汚染に晒されているということで、健康面で非常に危惧されるといえます。こうした点からも環境からみた持続可能性についてもっと真剣に考える必要があるといえます。