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第3章まとめと総合評価

 

3.1 3ヵ年の研究の成果と課題

本研究は、合成開口レーダの海洋観測への応用可能性を検討することを目的として3ヵ年にわたって実施された。3ヵ年の主な研究内容を以下に示した。

・平成8年度 SARの観測原理、特徴、データ処理方法などについてとりまとめるとともに、SARに関する現状や技術動向を文献・ヒアリング等により調査した。また、海洋観測における有望な分野として、流氷、海流、波浪、内部波などをあげ、次年度以降の計画を策定した。

・平成9年度 流氷を対象として、SAR画像による海洋情報の解析を実施した。RADARSAT画像を購入、目視による流氷判読、SAR画像に見られる流氷の特徴的パターンの抽出、画像処理による流氷分布・密接度の算出を行った。

・平成10年度 流氷に関する解析を引き続き実施するとともに、新たに海流・波浪について画像と現地調査結果との比較・解析を行った。SAR画像としてはJERS-1、ERS-1/2、RADARSATを用いた。また、3ヵ年の解析結果、SARの適用可能性などについてとりまとめた。

以下に、SARの特徴と実際のデータを基に解析を行った流氷、海流、波浪の各分野について研究の成果と今後の課題について整理した。

 

3.1.1 SARの特徴

(1)一般的特徴

SARは可視・赤外バンドによるセンサ(LANDSAT/TM、SPOT/HRV、NOAA/AVHRRなど)に比べー般的に次のような特徴を持つ。

・雲の影響を受けにくい

・昼夜の区別なく観測可能

・表面粗度、水分量などの情報が得られる

また、マイクロ波センサは空間解像度の低いものが多いがSARは数10mという高い解像度が得られる。

一方、短所としては以下の点が挙げられる。

・可視・赤外センサに比べ画像を直感的に解釈することが難しい場合がある

・陸域では山地でのフォアショートニングによる変形が生じる

・斜めに観測することから高い対象物の裏側が陰になり観測できない

・アクティブセンサであり消費電力が大きい(連続して動作する時間に制限がある)

(2)海洋分野でのSARの特徴

海洋分野でのSARの特徴は、次のとおりである。

・雲の多い海域・季節であっても観測できる

・波浪・海流などの検出ができる可能性がある

・内部波などSAR以外のセンサでは検出できない現象を捉えることができる

・オイルスリックなど表面の物理性質を変える物質の流出を検出できる可能性がある

 

 

 

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