観測された後方散乱係数には、うねりのような長波長の波の影響だけではなく、風波の方向依存性、風速依存性による影響、内部波などさらに長波長の波の影響などが含まれる。内部波による影響を推定することは困難であるが、風波の影響については後方散乱係数と風向(入射方向との相対方位)、風速による変化が現地観測などにより調査されている。SEASAT/SAR(Lバンド、垂直偏波)の場合の例を図47に示した。このような実験結果を元に後方散乱係数を補正することで風波の影響を排除できると考えられる。本調査の対象としたERS-1/SAR(Cバンド、垂直偏波)については同様の結果が発見できなかったが、このようなデータが得られれば解析を一歩進めることができると考える。
本調査の場合、波高と後方散乱係数の間に単純な相関関係は得られなかった。しかし、風向と風速を同じ条件にそろえるため、風向がW〜WNW及びその反対(後方散乱レベルは0°と180°でほぼ同じであるため)のE〜ESEで、風速が6m/s程度のケース(図46の破線で囲んだ4ケース)のみに注目すると正の相関が認められた。